研究課題/領域番号 |
21K12326
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
皆川 朋子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (10355828)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中小河川 / 豪雨災害 / 魚類 / 河川改修 |
研究実績の概要 |
気候変動により頻発化・激甚化する豪雨に対する大規模な自然攪乱の影響とその後実施される大規模な河川改修による人為的攪乱は、中小河川の魚類群集に大きなダメージを及ぼし、魚類の存続や多様性に負の影響を及ぼすことが危惧される。本研究は、2017、2020年に甚大な豪雨災害が起きた筑後川及び球磨川流域の支流中小河川を対象に、豪雨による自然攪乱およびその後大規模に実施される災害復旧工事が魚類に及ぼす影響に関して、攪乱外力や河川生態系がもつレジリエンス維持機構に着目し解明し、これを踏まえ気候変動下における魚類群集保全のための方策を明らかにすることを目的としている。 2022年度は、15河川を対象に豪雨後の河川改修による河道改変の状況を整理するとともに、いくつかの河川を対象に河川改修が及ぼす水温への影響を評価した。水温は、改修後の水温データを2022年8月に取得し、これと改修前の推定水温と比較することで評価した。その結果、対象河川の総流路延長の約67%で河川改修が実施されており、川幅拡幅比は最大5倍であり、河床掘削は最大2mであった。水温への影響に関しては、川幅拡幅比が2.6倍であった河川では最高水温が36℃を越える地点があること、改修前の推定水温と比較すると、平均水温では平均0.7℃、最高水温では平均1.4℃上昇している可能性があることが示された。中小河川においては、河川改修によって大規模に改変されることにより、生息空間の改変のみならず、水温にも大きな影響を与えることが定量的に明かになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度及び次年度は、その後の河川改修が河川環境に及ぼす影響に関して継続的にデータを取得し、魚類の回復実態とこれに関与するレジリエンス要因及び河川改修の内容(河道拡幅率、横断形状(単断面、副断面)等)、その後形成される河道の河床形態やハビタットとの関係性を明らかにすることを目的としている。当該年度は河川改修の拡幅率や横断形状の変化を河川改修が実施された15河川を対象に定量的に把握することができた。また、魚類の生息場への影響に関して、ハビタットについては、河川改修が終了していないことから次年度以降に行うこととし、当該年度は水温に着目して評価を行うことができた。したがって概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行ってきた魚類の回復状況を継続し実施するとともに、ハビタットの回復状況についてのデータを取得し、魚類の回復実態とこれに関与するレジリエンス要因(回復ソース)及び河川改修の内容(河道拡幅率、横断形状(単断面、副断面)等)、その後形成される河道の河床形態やハビタットとの関係性を明らかにする。 最終年度では、これらの結果を踏まえ、豪雨による自然攪乱、その後実施される河川改修に対してレジリエント要因を保全し、かつ多様性を低下させる要因を低減させる、魚類群集保全のための方策を検討する予定である。
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