これまでの成果は研究論文の形で数本投稿した。また、著作物として、教科書「動物の進化生態学入門-教養教育のためのフィールド生物学-」;学術図書出版;冨山清升著;を出版した。 鹿児島県は本土と26の有人島、 合計605もの離島が南北およそ600kmにわたって多くの島嶼を抱えており、 本土と南西諸島では属する気候帯も異なる。 その結果、多様な生態系が広がり、 多くの動植物が分布している。 その中でも陸産貝類は移動性が乏しく、 奄美大島をはじめとした多くの離島で様々な固有種が発見されている。 しかし離島を調査地とした研究に比べて、 鹿児島本土、特に都市部を対象とした研究が遅れている。 また、 都市が生物群集に与える影響に関する研究、 つまり都市生態系の研究は日本ではほとんどされていない。 本研究では、都市を島嶼のような閉鎖生態系と見立て、島嶼生態学の手法を適用した。 近年では鹿児島本土各地で以前は農地であった土地や生物多様性の高い地域の都市開発や高速道路の敷設が進んでいる。 都市や大きな道路の存在はたとえ地続きであっても、 河島嶼と同等の地理的隔離の効果を陸産貝類に与えることが予想される。 こうした現状から、 都市化はすでに現在の鹿児島における陸産貝類群集に何らかの影響を与えていることが考えられ、都市独自の遺伝的分化も予想される。 そこで、 本研究では、 鹿児島市北部、 鹿屋市南部、 奄美市北部から中央部の3つの地域で合計10地点を調査地とし、 本土と離島間での陸産貝類群集の比較、 本土内での比較、 そして同じ地域内での比較を行った。 3年目となる年度は、過年度の成果を踏まえ、実際の野外調査を行い、結果を分析した。
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