伊豆諸島御蔵島に生息するミナミハンドウイルカの繁殖生態並びに摂餌生態を明らかとするため,2023年度は,2022年度に採取した35個体の糞よりDNA抽出を実施するとともに,糞採取時撮影された動画より得られた糞由来DNAの個体IDを取得した.得られたゲノムDNAから,餌生物由来遺伝子(COI領域)におけるPCRおよび次世代シークエンシングによって食性データを得た.また,個体IDが獲得できたゲノムDNAを鋳型としてmtDNAおよび20種類の多型マイクロサテライトにてPCRを実施し,電気泳動によりバンドを確認したものにおいてサンガーシークエンシングによって遺伝子タイピングを実施した.その後,個体の性別,年齢などの生物学的情報を基に,Cervus ソフトウェアを用いて親子鑑定を実施し,繁殖生態解明のための家系データを構築した. 食性解析については,2022年度に得られた食性データを2021年度までに得られたデータに統合させ分析を進め,個体ごとの嗜好性が無いこと,季節や性別によって食性が異なることを考察した. また,目視調査が開始された1994年より既に成熟していたとみられる個体の年齢を推定するため,糞由来DNAよりエピジェネティック解析を試み,糞のような劣化した遺伝子からの年齢推定に成功した.本成果は13th International Mammalogical Congressデ発表するとともに,Molecular Ecology Resourcesに掲載された.
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