研究課題/領域番号 |
21K12334
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
平田 晶子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 森林総研特別研究員 (80624329)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マツ材線虫病 / 枯死木分解 / 気候変動 / 炭素収支 / 拡散モデル |
研究実績の概要 |
気候変動にともなう森林病虫害の拡大は、大規模な樹木枯死を引き起こし、森林の炭素収支を大きく変動させる可能性がある。しかし、①複数の要因が関与する病虫害発生域の予測が難しかったこと、②病虫害枯死木の分解過程の観測研究が少なく、二酸化炭素放出量の定量化が困難であったことから、これまでの広域炭素収支評価では病虫害の影響は組み込まれてこなかった。本研究では、気候変動による被害域の世界的な拡大が懸念されているマツ材線虫病(マツ枯れ)に焦点を当て、マツ枯れ被害の拡大予測と、病虫害特有の枯死木分解過程を組み込んだ炭素循環モデルの開発を組み合わせることで、病虫害による森林の広域炭素収支変動を明らかにすることを目的とする。 病虫害被害木は、病原生物が樹木の枯死を引き起こす過程で、枯死木材の化学組成が変化することにより、風倒など他の要因で発生した枯死木よりも分解速度が速い可能性がある。そこで、マツ枯れ枯死木に特有の分解特性を定量的に評価するために、マツ枯れ枯死木からの二酸化炭素放出量の観測体制を構築した。マツ枯れによって枯死した被害木の丸太と、健全木を伐採した無被害木の丸太をセットにしてマツ林内に設置し、枯死木CO2計測チャンバーを用いて枯死木丸太からの二酸化炭素放出量と環境条件 (温度、枯死木含水率など) の測定を行った。その結果、気温が高いほど分解呼吸量が高くなる傾向が見られた。また、これまでの観測では、病虫害枯死木と健全木との二酸化炭素放出量には、大きな差が見られなかった。さらに、研究対象地の富士山麓等のマツ林において、マツ枯れ被害状況の調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、枯死後間もないマツ枯れ被害木を用い、マツ枯れ枯死木からの二酸化炭素放出量の観測体制を構築した。観測システムで使用する簡易網室の作成が遅れたことから、観測開始が秋以降となったが、観測システムの構築と観測の継続は順調に行えており、二酸化炭素放出量の季節変動が評価できるようになった。また、コロナ禍の影響で調査回数は予定より少なくなったものの、研究対象地域のマツ枯れ被害情報についても現地調査を行った。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
マツ枯れ枯死木からの二酸化炭素放出量の観測を継続し、枯死木分解モデルの初期パラメータを検討する。また、拡散モデルに必要な研究対象地のマツ林の分布情報を整理し、拡散モデルの試作を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響などで、予定していた現地調査の回数が減ったため、次年度使用額が生じた。次年度で実施予定の現地観測や調査の旅費、および観測機器等購入のための物品費として使用予定である。
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