マツ枯れの拡大が森林の炭素循環に与える影響を明らかにするために、アカマツ枯死木からの二酸化炭素放出量と環境条件 (温度や枯死木含水量) の観測を行うとともに、富士山麓を対象に、マツ枯れが発生した場合の、枯死木の分解に伴うポテンシャル二酸化炭素放出量の広域推定を行った。 観測の結果、温度-放出量関係については観測地間で大きな違いは見られず、温度が高くなるほど単位重量当たりの二酸化炭素放出量が増加する傾向が示された。一方、含水量-放出量関係についても、含水量が多いほど放出量が多い傾向があったが、観測地間で枯死木サンプルの含水量に明瞭な違いがあった。広域スケールでアカマツ枯死木からの二酸化炭素放出量を推定するには、枯死木含水量の適切な評価が重要であることが示された。 富士山麓を対象にマツ枯れ発生危険度を評価した結果、多くの地域は自然発生抑制域であり、当初計画していた拡散モデルで想定されているプロセスとは異なるプロセスで被害が拡大する可能性が示された。そのため、評価対象域のマツ林全域を対象に、マツ枯れが発生した場合のポテンシャル分解放出量の推定を行った。評価対象地のマツ林について、マツ枯れ発生危険度ごとに異なる枯死率を設定し、マツ枯れが発生した場合のポテンシャル放出量を評価した結果、枯死木の発生率が高い場所では、10年以上、NEPと同等かそれ以上の枯死木由来のCO2放出が続く可能性があることが示された。
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