研究課題/領域番号 |
21K12337
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中久保 豊彦 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (70648766)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 下水道区域の縮小 / 環境配慮型浄化槽 / 汚泥処理機能統合 / 物質収支解析 / 温室効果ガス排出量 / 事業コスト評価 |
研究実績の概要 |
令和3年度研究計画に従い実施した。 下水道区域図のGISデータベース化による縮小ポテンシャルの分析に関する研究:下水道区域を予測するためのアルゴリズムを構築し、下水道区域メッシュ推計地図(3次メッシュ解像度、2015年度)を全国ベースで作成した。予測精度の検証は、群馬県の下水道区域メッシュ(実績値)を用いて行い、アルゴリズム上の計算手法を鑑みて、推計が妥当であることを検証した。現状(2015年度推計)での下水道既整備区域が将来にわたり変化しない条件下で、将来人口を反映した人口分布ならびに排水量分布を重ねることにより、2050年度に向けた下水道区域の人口密度と年間有収水量密度を全国で予測した。これにより、将来発生しうる下水道区域の縮小量を分析するための基礎データを作成した。 下水処理場(し尿・浄化槽汚泥の受入実施施設)に対する調査と物質収支モデルの構築:し尿・浄化槽汚泥の受入を実施している下水処理場を対象にアンケート調査を実施し、し尿・浄化槽汚泥の受入に伴う水処理ならびに汚泥処理への影響、影響に対する対策や設備増強の有無を把握した。加えて、し尿・浄化槽汚泥の受入に伴う返流負荷の増加と水処理への影響に対する対応に向けては、標準活性汚泥法施設での硝化促進・脱窒運転が着目される。この改修が行われている下水処理場に対するアンケート調査を実施し、モデリングに用いるパラメータ値を整理した。下水処理場での水処理条件として3つの方式(標準活性汚泥法、標準活性汚泥法施設での硝化促進・脱窒運転、オキシデーションディッチ法)、ならびに汚泥処理プロセスにおける嫌気性消化の有無を踏まえ、6つの技術ケースに対する下水処理場・物質収支モデルを構築した。これにより、し尿・浄化槽汚泥の受入を行う下水処理場が必要とする設備改修・増強の量を分析することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度研究計画に従い、下水道区域の縮小策と汚泥処理機能の統合策を対象とした研究開発に取り組み、計画の通り進展した。 下水道区域の縮小に関して、アルゴリズムを構築して全国の下水道区域を対象としたメッシュデータ地図を作成した。現状での下水道既整備区域が将来にわたり変化しない条件下で、将来人口を反映した人口分布ならびに排水量分布を重ねることにより、2050年度に向けた下水道区域人口密度と年間有収水量密度を全国で予測した。 汚泥処理機能の統合(下水処理場によるし尿・浄化槽汚泥の受入と混合処理)については、同事業を実施している下水処理場を対象にアンケート調査を実施し、し尿・浄化槽汚泥の受入に伴う水処理ならびに汚泥処理への影響、影響に対する対策や設備増強の有無を把握した。加えて、同事業の促進につながる標準活性汚泥法施設での硝化促進・脱窒運転に着目し、この改修が行われている下水処理場に対するアンケート調査を通して、モデリングに用いるパラメータ値を整理した。し尿・浄化槽汚泥の受入に向け下水処理場が必要とする設備改修・増強の量を分析することが可能となる物質収支モデルを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
インフラ縮小のための判定基準についてはこれまで十分に論じられていない。そこで本研究では、下水道区域縮小を判定する費用関数を作成し、予測した将来(2030年度、2040年度、2050年度)の下水道区域人口密度(指標A)・年間有収水量密度(指標B)に適用することで、下水道区域の縮小量を全国で予測する。 下水道区域の縮小と連動した生活排水処理インフラの再編を具体化するため、シナリオ解析を実施する。排水処理系の更新(下水道と浄化槽の分担判定、地域の浄化槽ストック更新、共同浄化槽整備事業)と、汚泥処理化系の更新(下水処理場によるし尿・浄化槽汚泥の受入と混合処理)を組み合わせた再編計画を設計し、環境性(温室効果ガス排出量)と経済性(事業コスト)の観点から評価する。 人口減少社会においては、処理量に対する処理能力の余剰が高まる。適切なダウンサイジングを行うための施策の提案と、それによる効果の予測を通して、生活排水処理インフラ再編の有用性を検証する。
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