研究実績の概要 |
モデル地域(2015年度の人口70,050人、うち下水道区域人口40,539人)を対象に、設計した生活排水処理インフラ再編計画に対するシナリオ解析を行った。2015~2030年度にかけて、排水処理系では汚水未処理人口の合併処理浄化槽人口への転換、下水処理場における標準活性汚泥法の硝化促進・脱窒運転への改修を対象とし、汚泥処理系では下水処理場でのし尿・浄化槽汚泥の受入と嫌気性消化・バイオガス発電の導入を適用した。2030~2050年度にかけて、排水処理系に対して下水道既整備区域の低密エリアにおける浄化槽人口への転換、浄化槽人口全体に対する合併処理浄化槽の汎用品から窒素除去型(循環、流量調整機能を保有)への更新を適用した。高度処理(窒素除去)を水質総量規制ではなくCH4/N2O排出削減の視点で捉え、プロセスからの排出に加え、処理後排水の自然界分解に伴うN2O排出もバウンダリーに含めた。温室効果ガス(GHG)排出削減の視点では、脱炭素化の進行により系統電力のCO2排出係数が低下していくことを与件として、電力消費量が増加してもN2O排出の削減を優先することの有用性を検証した。評価の結果、GHG排出量は2015年度の5,892 t-CO2eq/yに対して、2030年度(人口55,545人)には4,067 t-CO2eq/yまで低下する。2050年度(人口37,327人)には1,427 t-CO2eq/yとなり、排出削減の道筋を示した。 これまで総量規制で論じられてきた窒素除去策を、より上位の排水処理系における更新計画と組み合わせることで、生活排水処理インフラ全体のGHG排出削減に大きく寄与することを明らかにした。共同浄化槽含め、人口減少に伴い排水処理系に占める浄化槽の比率が高まる中、浄化槽でのCH4/N2O排出削減を促進するアプローチの有用性を示した。
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