開発した下水道区域メッシュ推計モデルを活用して、下水道既整備区域の人口密度(3次メッシュ解像度)を2015年から2050年にかけて予測し、判定基準を適用することで撤退候補エリアの面積を推計した。下水道既整備区域の撤退計画を具体化するにあたり、小規模下水処理場を含む下水道区域の完全撤退であるのか(下水道事業からの撤退)、低密度化が進む下水道区域メッシュの一部撤退であるのかを分類し、それぞれの撤退ポテンシャルを明らかにした。 小規模下水処理場(OD法採用施設)では、水処理量あたりの電力消費原単位(kWh/m3)が標準活性汚泥法と比較して高く、流入比率の低下が一層の電力消費原単位の向上を引き起こしている。電力の自立化と温室効果ガス(GHG)排出削減に向け、太陽光発電(PV)施設と連結した小規模下水処理場のモデリングを行った。電力需要を30分解像度で推計できるモデルを開発し、年間を通してPV電力の自給率ならびに消費率を評価した。OD法をOR制御が可能な連続曝気方式に改修し、負荷調整槽を活用して曝気装置の電力消費時間帯をPV発電時間帯に配置することにより得られる自給率、消費率の向上効果を明らかにした。加えて、下水処理場による浄化槽汚泥の共同処理事業を対象とし、PVの余剰電力が大きい月に浄化槽の清掃(汚泥の収集)業務を集中させる施策が脱水機の稼働率を高め、PV電力の消費率を向上させる効果を明らかにした。開発した電力需要推計モデルは、小規模下水処理場の経営改善に向けた支援モデルとして活用することが可能である。
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