研究課題
最終年度では、慣行と農薬成分数が低減した栽培(低投入)の双方が実施されている8圃場(長野県6圃場、新潟県1圃場、福島県1圃場)の農薬散布量データに、算定された非線形の生態毒性影響評価係数を適用して両防除戦略の生態毒性影響を推計し比較した。そのうえで、従来の線形影響評価係数を使用した結果との比較も行った。その結果、8圃場中3圃場では低投入の方は逆に影響が増加したものの、評価対象圃場全体では成分減少率が大きいほど、生態毒性の減少率も増加する傾向であった。その成分減少率と影響減少率の関係において、非線形の生態毒性影響評価係数に比べて、線形係数を用いた場合は、生態毒性影響が極端に高い、あるいは極端に低いことが見られた。これは、生態毒性を過大あるいは過小評価する影響評価係数が、圃場レベルの評価結果にも影響したことが示唆される。よって、非線形の影響評価係数がより適切な圃場レベルの評価結果が得られると判断できる。プロジェクト全体を通じて以下の成果を得た。(1)農薬成分の毒性(HC50)と作用機構、つまり、生物種の感受性分布(SSD)の傾き、を考慮する非線形の生態毒性影響評価係数算定方法を開発した。その方法を基に、水田農薬109成分を対象とする影響評価係数を算定した。既存の線形係数(HC50のみ考慮)と比較した結果、農薬成分のSSDの傾斜が影響評価係数に大きく影響することが明らかとなり、農薬の作用機構の考慮がより精緻な生態毒性影響評価係数の算定に貢献することが示唆された。(2)慣行から低投入に切替える防除戦略を取る8水田農場を対象にした事例評価を行った結果、非線形の生態毒性影響評価係数がより適切な圃場レベルの評価結果が得られることが分かった。
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Science of The Total Environment
巻: 887 ページ: 163636~163636
10.1016/j.scitotenv.2023.163636