本研究は「国境を超えたサプライチェーン単位での包括的な環境管理(Green Supply Chain Management、以下GSCM)をいかに実現するのか」という方法論を、環境管理の格差が激しい日中製造業に対する分析を通して定量的に提示することを目的とした。 まず文献調査のもとで、イノベーション普及理論やインダストリアルエコロジー概念(industrial ecology、IE)、「正当性理論」、「ステークホルダー理論」、「制度理論」などを用いて、GSCM展開の予測モデルの理論フレームワークを構築した。つぎに、GSCM国際的展開の影響要因に関する日中企業の収集データ(約400社の製造企業の環境報告書、統合報告書、CSR報告書などから抽出)から、テキストマイニングや回帰分析などを用いてパラメータを求め、GSCM展開に関する「伝播モデル」を検討した。さらに、企業のGSCM実施の確率分布を分析し、「プロビット行動モデル」を構築することでGSCM展開の動的経路の解明を行った。そのうえで、GSCM展開の予測モデルの開発を行った。 次にアンケート調査と統計モデルを用いて、GSCMの二国間の展開構造は何かを明らかにした上で、日本企業の先進的な低炭素化管理が調達連鎖を通じて中国企業へと拡散する動的経路を予測することにより、国境を超えたGSCM推進の条件を検討した。 最後に、日中GSCM展開モデルとその予測モデルをもとに、製造業や水素産業におけるGSCMの国際的展開の推進条件を検討した。互いに取引関係のある日中企業に本研究の成果を適用し、社会実装を試みた。さらにペロブスカイト太陽電池製品のサプライチェーンを取り上げ、アンケート調査(日本とイギリス、約200人ずつ)を用いてサプライチェーンの末端となる最終消費者を含めたGSCMの推進条件を検討した。
|