研究課題/領域番号 |
21K12357
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
河田 幸視 近畿大学, 経済学部, 准教授 (60449022)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | グリーンインフラ / 減災 / 減災 / 自然災害リスク / 市民 / 自助 / 構造方程式モデリング |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は、大きく2つに分かれる。 1つ目は、私たちがグリーンインフラを選んだ時に直面するリスクを、どの程度把握できているかについてである。グリーンインフラは生態系に根ざし、維持や更新に要する費用が、既存の防災インフラ(グレーインフラと呼ばれるコンクリート製の防潮堤など)に比べて安価なため、よい印象がもたれ、活用に賛同されやすい可能性がある。災害のリスクは個人毎に異なり、グリーンインフラを適用した場合、グレーインフラよりもリスクが大幅に高まる人がいるが、そういった人のコストの減少もリスクが低い人と同様である。この点への理解がなされた上で、グリーンインフラが選択されているのかを、2022年に実施したアンケート調査のデータで分析した。構造方程式モデリングを用いた分析によると、自分の災害リスクの増加を十分に理解していない人々がいることが示唆された。この結果は、2023年7月に韓国で開催された国際コンファレンスで報告し、学術論文として専門誌に投稿中である。 2つ目は、「自分の命は自分で守る」ことが強調されているが、理解は進んでいないことについてである。災害時に発生する事態を具体的に示すことで、私たちの行動は変わるかを、2022年と2023年に行ったアンケート調査を基に、2段階で分析した。まず、慣れないリスクに直面すると、コスト低減をより重視することを確認した。次に、リスクに対する知識を増やすことで、避難行動を促進できるかを検討したが、具体的な事例を示す程度では行動は変わらないことが示された。この結果は、2024年にモロッコで開催される国際コンファレンスで報告する予定である。 上記以外にも、被害の発生が、人為的な原因と自然の出来事のどちらに起因するかが、人々の復旧に対する支援にどのように影響するかについても、学会発表等をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度実施予定の内容の一部を、本年度実施したため、進捗はやや遅れている。成果はとりまとめて学会で報告し、専門雑誌に投稿している。成果発表については、概ね、当初の予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
当初、2年間で予定していた国内調査に3年を要したもの、予定の内容はおおよそ完了したことから、今後は海外調査をメインに実施する。また、得られた研究成果は、なるべく早い時期に専門雑誌に投稿し、掲載されることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由は、1)初年度と2年目に分けていたアンケートを1回でおこなったため、アンケートの経費を抑えることができたことや、2)研究開始後に大幅にコストを抑えてアンケートをおこなえる調査会社を見つけ、本研究課題にも適していたために、調査会社を変更したこと、3)3年目に予定していた海外調査を、研究全体の進捗の遅れで延期していたことで、今年度までの調査費が抑えられているためである。次年度は、当初の予定通り、海外で調査を実施する。また、やや資金に余裕が出たことから、アンケート調査を追加し、本研究の実施途上で出てきた新しい課題の検討を行う予定である。
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