研究課題/領域番号 |
21K12358
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
戸川 卓哉 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島地域協働研究拠点, 主任研究員 (00595928)
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研究分担者 |
福島 秀哉 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (30588314)
大西 悟 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島地域協働研究拠点, 主任研究員 (80714211)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パターンランゲージ / 先進事例分析 / インタビュー調査 / 環境創生 |
研究実績の概要 |
地域の構造転換により環境や社会と調和した持続可能な地域づくりを実現したグッドプラクティス(環境・まちづくり先進都市)として知られている岩手県紫波町,宮城県女川町,宮崎県日南市の3地域を対象として,資料文献調査及び政策担当者へのインタビュー調査を実施した.インタビュー調査の議事録のうち課題解決のプロセスについて言及されている部分を抽出し,それぞれにタイトルを付与するとともに,パターン・ランゲージのフォーマット(状況・問題・フォース・解決方法・結果状況)にしたがって説明を記述した.その結果,28のパターンが抽出された.抽出されたパターンは,それぞれの地域づくりの前線で関わった当事者の視点から記述されている点が特徴的である.例えば,新旧の中心地を同時にプロジェクトエリアとして設定することで地域対話が促進されるといった機微な情報を捉え表現するパターンが抽出されている.既往研究では,客観性を重視するあまり,このような実践者の視点は十分考慮されてこなかった.しかし,地域づくりの現場では,実践者はそれぞれの視点から得られる限られた情報の中で,様々な意思決定をすることが求められている.パターン・ランゲージの枠組みに基づいて記述された情報は,現場の実践で求められている視点とも合致するものであると考えられる.このように,当事者的な視点から施策実施プロセスの要点を捉えた有用の知見を抽出することができた.さらに,抽出されたパターンから先進事例に共通するプロセスを分析することにより,全体的な構造として,動き出すためのきっかけがあり,そして,それに続いて調査研究やローカルガバナンスなどに関する間接的な取り組みがなされつつ,組織体制や基本計画が整備される.その上で,直接的なプロジェクトのデザインがなされるという構造が共通して見出された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って環境・まちづくり先進都市の事例調査とその分析を実施することができ、さらに学術論文として成果を公表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で提示した28のパターンについては,今回調査を実施した3地域においてはインタビュー調査対象者を拡大し多角的な観点から地域の実態を明らかにするとともに,事例調査の対象地域を拡大することを通じて,漸進的に改訂していく必要がある.さらに,パターンの利活用については以下のように推進する.本研究で抽出されたパターンは,対象地域が,次のプロジェクトを実施する際に再利用される可能性は,本研究の成果を地域にフィードバックするプロセスで確認されたため,これをフォローアップしていく必要がある.さらに,本来的な目的であった他地域での活用を検討する場合,その意義を伝えることには課題が残っている.まずは,パターン・ランゲージと地域特有の課題との関連およびステークホルダーの具体的な取り組みを俯瞰的に示すことは,その一助となりうると考えられる.その上で,より実践的なパターン・ランゲージの活用方法を検討することで,環境・まちづくり先進都市に見られる共創的プロセスに関する知見の展開を支援していく必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の流行により出張・外勤等が制限されたことにより、予定していたフィールド調査を文献資料を中心とした調査に切り替えて実施したため次年度使用額が生じた。今年度は昨年度実施できなかったフィールド調査の経費として使用する計画である。
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