研究課題/領域番号 |
21K12363
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
當山 啓介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00613001)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 行政計画 / 森林計画 / 地方自治体 / テキスト / 実効性 |
研究実績の概要 |
膨大な手間をかけて多数の行政計画が策定されているが、社会の変化速度に比してそのあり方は旧来的であるとともに、貴重な人員労力を投下するにあたっての手間の削減や実効性の向上が求められる。本研究の目的は、比較的均質な対象範囲について多数の計画事例が存在する森林・林業の計画を主たる分析対象として、計画に関するの知見の普遍化を行い、真に実効的かつ効率的な行政計画が持つ内容・形態を明らかにするとともに、その策定・実行・評価修正プロセスに資するツールを提示することである。計画に記載された方針・政策自体を問うというよりも、計画自体(文書としての計画本体)のあり方に関して、行政計画の実効性改善や目標達成を支援することを目指す。 本研究は大きく分けて、①行政計画(文)の類型化(備えるべき外形的特徴の抽出と普遍化)と、②PDCAサイクル等の適応的管理に資する行政計画検証支援ツールの確立と提供 の2段階に分けることができる。研究期間前半は①の作業が中心となる。最終的には、行政計画についてその類型的評価や特徴として妥当な観点を確立・提示するとともに、それらを任意の行政計画について簡便かつ明瞭に提示したり、過去計画の検証や次期計画の修正を適切かつ容易に実施できるツールを提示することを目標としている。また、森林計画の実態が詳細に把握されることで海外の森林計画との詳細比較が可能になり、日本の森林計画制度の客観的把握と改善につなげることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①行政計画(文)の類型化(備えるべき外形的特徴の抽出と普遍化)、について、最上位の森林・林業基本計画と全国基本計画、都道府県スケールに近い地域森林計画(全国)、林業県・非林業県における市町村森林整備計画を収集し、データベースとして整理した。特に地域森林計画については公表状況や形態・外形的特徴のリスト化を行い、上位計画や並列的な計画の内容の包含関係、計画の変更更新の実態などを分析した。また、計画間の類似性や相違に関してテキストマイニング等の分析を行い、同種計画(同県内の別計画など)、異時点同計画であれば類似度・差異の単純抽出は有効な手段であることを確認した。 同時に、COVID-19の影響で現時点では予定より縮小しているものの、地方自治体の森林計画作成担当者に対する聞き取り調査を行い、国の上位計画の影響、関連組織の意向による計画案修正の可変性などについて整理した。 また、各計画は実現可能性(実現のための手段等の記載とその現実性)、挑戦性(目標の高さ)、検証可能性(客観的評価を受けることが可能か。目標の一貫性など)の程度が様々であると考えられる。主に地域森林計画について、数量目標値と計画期間終了後の実績値との比較分析を進展中であり、複数期間の計画について、「挑戦性が高いが達成率は低い」を繰り返すケースの実態等を分析している。 関連して、社会的共通資本に該当しうる「計画」分野全体の中での森林計画分野の位置づけを明瞭化するためのレビューを完了した。公共性ひいては長期性を備える諸分野に計画学が存在するが、森林計画学分野は林業経営に分野起源があることとも関連して、行政的に計画事項達成を果たすための知見集積が少ないこと等を示した。
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今後の研究の推進方策 |
①行政計画(文)の類型化(備えるべき外形的特徴の抽出と普遍化)、について、データの収集と整理、上位計画や並列的な計画の内容の包含関係、計画の変更更新の実態整理、目標値と実績値との比較分析などを継続する。 これらを通じて、各計画の実現可能性・挑戦性・検証可能性・可読性(読みやすさ・簡潔さ)等について、対象計画を整理・評価することを試み、計画改善のために活用できる客観的根拠を構築する。また、その指標によって各計画の特徴提示や類型化を行い、(a) 計画の挑戦性と検証可能性の関係 (b) 上位計画または前計画と現計画の一致度と、計画策定や政策実施への意欲や実現可能性・挑戦性との関係 (c) 計画の検証可能性と実現可能性との関係 (d) 計画の分量や可読性と検証可能性の関係 といった仮説・論点を分析する。 さらに、②PDCAサイクル等の適応的管理に資する行政計画検証支援ツールの確立と提供、について、①によって示した類型的評価や特徴に関する知見を基に、任意の計画についてその類型的評価や特徴を簡便かつ明瞭に提示、過去計画の検証や次期計画の修正を適切かつ容易に実施できるツール(チェックリストやアプリケーション)として提示する。また、①および②のツールの妥当性検証作業を兼ねて、既存の計画に対して変更提案例を提示することで、検証支援作業の実用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に、COVID-19の影響によって学会参加旅費が想定より小さかったためで、2022年度には使用する見込みである。
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