数多く策定される行政計画の手間削減や実効性の向上に資するため、比較的均質な対象範囲について多数の計画事例が存在する森林・林業の計画を主たる分析対象として、計画に関するの知見の普遍化を行った。公共性ひいては長期性を備える諸分野に存在する「計画」分野全体の中でも、林業経営にも分野起源がある森林計画学分野では、行政的に計画事項達成を果たすための分野横断的知見の提示がこれまでは少なかったこと等を示した。 最上位の森林・林業基本計画と全国基本計画、都道府県スケールの地域森林計画の分析を通じて、上位計画や並列的計画との相互関係は多様かつ不明瞭であったほか、計画目標の挑戦性(目標の高さ)と達成率は反比例の関係が多く見られ、高い計画目標を実現する目途が立たない状態が継続的に生じていた。目標の一貫性の高さと計画実効性の低さが表裏一体の状態にあったといえ、これの遠因として、テキスト比較を通じて、目標達成率が低い際の総括表現が定型表現に留まっていて実効的でない点などを指摘した。このような課題の解決に対して、計画の内容・目標およびその事後評価や総括の可視化、優良事例の共有や普及の必要性を論じた。また、早生樹導入のような記述有無が分かれる論点を抽出することで、政策動向の差を論じられる可能性を指摘した。 森林計画の一覧・共有化サイトを試作し、その際に各計画に関しての差異点や特筆点について注釈を追加できる形を試作した。その際には、計画的政策推進のうえで望ましいと考えられる点のチェックリストを参照できる形とし、これらは行政計画の検証や作成の支援に資すると考えられる。
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