研究課題/領域番号 |
21K12364
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
錦澤 滋雄 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (70405231)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 営農型太陽光発電施設 / 複数案検討 / 持続可能性アセスメント / 地域受容性 / 合意形成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、環境配慮と地域便益の両面を考慮した再生可能エネルギー事業における、複数案設定の方法、両面を包括的に議論することの合意形成上の利点と促進・阻害要因、持続性アセスを制度化する上での要件と課題を検討することである。今年度は、地域便益の具体策として営農型太陽光発電施設を対象として、千葉県匝瑳市ならびに神奈川県小田原市の太陽光発電施設の二事例を対象として、実地調査した。千葉県匝瑳市の事例は事業実施にあたり市民出資、災害時電源供給などの地域貢献策に取り組む事例で施設周辺1.5kmに居住する住民にアンケート調査し(169票回収・1598票配布)、この取り組みが施設の受容性に及ぼす影響を明らかにした。当該施設、市内での施設導入などの複数案と比較し、当該施設への受容性が高く、通常のNIMBY現象とは異なる結果が示された。 一方、小田原市の事例では、営農型太陽光発電施設の立地に着目し、荒廃農地と通常農地の複数案と、営農型太陽光発電施設と宅地開発の複数案を設定して、施設周辺1kmに居住する住民へアンケート調査を実施した(154票回収・926票配布)。その結果、景観面に着目すると、荒廃農地への施設導入は荒廃農地のまま放置するよりも4分の3以上の回答者が支持していた。一方、通常農地と営農型太陽光発電施設の導入を比較した場合は通常農地のままの方が景観的に支持する声が高かった。また、宅地化との比較では両者が拮抗していた。 以上の実地調査と分析から、荒廃農地の営農型太陽光発電施設導入が支持が高いこと、景観上も許容されること、市民出資や災害時の電力供給など地域貢献策を含む施設の受容性が高まることが示唆され、これらを複数案として提案することで合意形成に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、環境配慮と地域便益の両面を考慮した再生可能エネルギー事業における、複数案設定の方法、両面を包括的に議論することの合意形成上の利点と促進・阻害要因、持続性アセスを制度化する上での要件と課題を検討することである。研究実績の概要で記載した通り、地域便益策の具体例として営農型太陽光発電施設を取り上げて、二つの事例を対象(千葉県匝瑳市、神奈川県小田原市)にアンケート調査を実施した。また、具体的な複数案を設定したアンケート調査票を作成し、合意形成に資する要因を解明することができた点で貴重な知見を得ることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
持続可能性アセスメントの観点については、制度を運用する具体的な事例がほとんどないため、複数案を設けて協力が得られる自治体において会議実験をすることができれば、より具体的な検討が可能となる。協力が得られる自治体が見つかれば、会議実験の実施を検討したい。ただ、会議実験には準備や費用面での時間と費用が必要となること、また本研究計画には含んでいないため、実現可能性を慎重に検討する必要がある。また、複数案検討については、自治体で取り組みが進んでいるゾーニングを用いた方法もあり、この点の合意形成効果を分析することも重要である。来年度はこの点の調査・分析を行うことも視野に入れて、持続可能性アセスメントの制度化に向けた促進・阻害要因を考察することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が若干生じたが358円と少額であり、最終年度のとりまとめに充てる計画としている。
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