研究課題/領域番号 |
21K12365
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松本 真哉 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (50345469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ライフサイクル思考 / 総合的な探究の時間 / 探究活動 / 教員研修 / カードゲーム |
研究実績の概要 |
本課題では、学習指導要領の改訂に伴い導入された総合的な探究の時間における生徒の課題設定や探究活動の指導において、製品などのライフサイクルに関する考え方(ライフサイクル思考)の導入を支援する教員向け指導教材とオンラインツールなどの開発と実践に取組む。 初年度の検討では、予定していた身近な物のライフサイクルに関するポスターとして、カレー、タオル、スマホの三つの課題についてポスターの作製を完了した。ポスター内容については、研究協力者である神奈川県教育委員会の担当者の助言も含め検討を進めた。また、教員向け研修に利用する教材内容については、以前より教員免許状講習で利用し好評であった温暖カードと、そのカード遊びから展開する製品や食品のライフサイクルに関係する二酸化炭素の排出や電力利用などをまとめるグルーワークを軸に構成することになった。検討の結果、これらの活動の前にライフサイクル思考に関する講義を実施し、ワーク後には対象教科の指導案について議論する活動を入れる約3時間の講習内容を初案として構成した。 研修会については、幸いにも年度内の実施が可能になったが、年度途中の新型コロナウイルスの感染状況の変化により、研修会の実施形式や時期が大きく変動し、最終的にオンラインのライブ形式で実施することになった。そのため、当初予定していた講義は、研究協力者の団体が提供するオンライン講義の事前受講に変更し、指導案作成に関する内容の実施は見送ることになった。 研修会は、2021年12月中旬にオンラインで32名の教員に対して、30分の事前学習を含む2時間半の内容で実施された。アンケート結果では、オンライン実施について幾つかの課題が示されたが、製品や食品のライフサイクルの探究活動の題材としての有用性や、実施したカードゲームやグループワークが探究活動の導入活動としての適用可能性が多く示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には、まず製品などのライフサイクル思考を基礎とした既存の教材や活動を、どのように探究活動の生徒指導に活用することが可能か、という点について、議論を重ねた。その結果、ポスターなどで取り上げる題材を中心として、対象教科である総合的な探求の時間の単元目標について、当該教科に関する参考資料などを基に検討した。単元目標を示すことで、これまでの教科教育でなじみの薄いライフサイクル思考という教育内容に関して、当該教科の学習活動と、育成を目指す生徒の資質・能力の関係を明確にすることができる。ここで検討した単元目標の内容を作製するポスターの内容に反映した。また、カードゲームやグループワークの実施から指導案作成に進む研修内容の流れも、この単元目標を基に構築した。以上の検討の結果、研修で利用する教材類の初期的な整備はほぼ完了し、研修内容の方向性や内容も確定することができた。 幸運にも、二年目以降に予定していた教員向け研修会の実施を初年度に進めることができたが、一方で、実施方法がオンラインになった点もあり、当初検討を進めていた内容における研修としての重要な活動である指導案作成とその議論の内容が実施できなかった。この点は二年目の課題として検討を継続する。 カードゲームのオンライン化については、教育関係のオンラインツール関連展示会の調査や、関連企業への見積もり検討など、実現に向けた初期検討を進めた。一方、初年度の研修がオンライン形式で実施する結果になったこともあり、カードゲームやグループワークのオンラインでの実施については、研修会で寄せられた課題も含め、実施方法などについて検討を継続する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
二年目の最初の活動として、作製したポスターを神奈川県教育委員会から県内の全ての県立高校に配布してもらうよう依頼を実施する。その際、ポスター配布の目的と活用方法に関する資料を添付する。また二年目の教員研修として、初年度に考案したライフサイクル思考を取り入れた当該教科の指導案の作成について検討する内容を含む研修会の実施について、神奈川県教育委員会と検討を進める。その他、初年度の研修会の受講教員のその後の当該教科における指導状況の追跡調査も実施する。可能であれば、ライフサイクル思考を入り口とした高校生の探究活動の事例の調査も実施する。これまでに検討した研修会や教材については、他の自治体の教育委員会や、私立などを含む他都県の学校などとの連携についても検討を進める。このような活動の普及については、関連学会での研究発表に加え、エコプロ展などの環境関連展示会での普及活動も進める。 教材開発については、カードゲームのオンライン化の検討を、学生や研究協力者の協力を得ながら進める。また初年度に実施した製品や食品のライフサイクルに関係する二酸化炭素の排出や電力利用などをまとめるグルーワークのオンライン実施について、研修会で幾つかの課題が見出された。この点については、今後も同様のグループワークをオンラインで実施する可能性もあることから、課題の解決に向けた検討を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、旅費の支出を予定していた学会がオンラインで開催されたため、利用しなかった旅費が次年度使用額の主な内訳である。次年度使用額については、2年目に予定している学会発表などの費用に充当する予定である。
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備考 |
・探究活動に係る指導力向上研修講座(第3回)、神奈川県教育委員会、2021年12月16日(オンライン) ・松本真哉、モノのライフサイクルを伝える教育研究活動、日本学術振興会 繊維・高分子機能加工第120委員会 第159合同分科会、2022年3月5日(共立女子大学及びオンライン)
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