研究課題/領域番号 |
21K12383
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
山本 達也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多文化共生 / チベット難民 / ポピュラー音楽 |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナ禍の影響により、ネパールのカトマンドゥに暮らすチベット難民ポピュラー音楽歌手に対するオンラインでの聞き取りを実施し、チベット難民とチベット系少数民族との文化交流を通じた多文化共生に関わるデータを収集した。また、本研究課題に関連する文献を精査し、チベット難民やネパールの多文化共生政策、ポピュラー音楽に関する先行研究のレビューや、文化人類学の関連理論に関する知見を深めた。 加えて、オンラインでの聞き取りを通じて、従来の多くの多文化主義に関する研究が示す欧米での政策を念頭においた多文化共生論や、近隣国であるインドにおける自由民主主義的な多文化共生モデルをめぐる議論とは異なった前提を持ってネパールにおける多文化共生を捉える必要性と、カトマンドゥで人々が日常レベルで繰り広げる共生実践を政策レベルとは異なった視点から捕捉する必要性を感じた。具体的には、人々の語りや実践に含まれる仏教思想という側面を微細にみていく必要がある。そのため、多文化共生と仏教思想の関連を念頭におきながら、チベット仏教思想に関する文献研究を実施した。 その一方でネパールに赴いて現地調査することができなかったため、聞き取り以上の参与観察を進めることができず、現地で実践されている文化交流やそれを通じた多文化共生の実相について明らかになるような知見やデータを収集することができなかった。この点は、本研究課題の当初計画に照らし合わせれば、十分な成果が得られなかった点として2022年度以降に補填される必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究レビューやチベット仏教に関する文献調査およびオンラインでの聞き取りを通じてポピュラー音楽を通じたチベット難民とチベット系少数民族との文化交流と多文化共生情報収集をすすめた一方で、2021年度はコロナ禍によりネパールに渡航できず、現地調査を実施することができなかったため、研究課題に必要なデータを十分に集めることができなかった。その結果、本研究課題での発見に基づいた口頭発表や論文の執筆に取り掛かることができなかった。その点で、本研究課題が当初想定していた計画と照らし合わせれば、現在の進捗状況はやや遅れている、と言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、夏季および冬季にネパールに渡航し、1か月から2か月程度の現地調査を実施することで、2021年度に十分に達成できなかったデータ収集を参与観察に基づいて確保することを本研究課題の実施計画とする。そして、夏季の調査で得られたデータをもとに各種研究会での口頭発表を行う。また、そこでの意見交換を経て国内外の学術誌に投稿する論文の執筆に従事することで、本研究課題の成果を広く公開することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍の影響で当初予定していたネパール渡航が叶わず、また、国内で開催された各種学会および研究会もオンラインでの開催で国内出張で旅費を使用することもできなかった。結果として、予算の繰越が発生することになった。 2022年度は、前年度に実施できなかった分も含めて2回のネパールでの現地調査を予定している。また、本研究課題の成果を発表するための研究会へ参加することも予定しており、上記計画を実施するための予算として2022年度の助成金を使用する予定である。
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