研究課題/領域番号 |
21K12390
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
渡会 環 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50584372)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高齢者介護 / ブラジル / ジェンダー / 介護士 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高齢化が進行するブラジルで、高齢の家族を介護するということがブラジルの家族の機能と成員間の関係に対してどのような変化をもたらしているのかを明らかにすることである。実施初年度である2020年度は、先行研究を読み進めるとともに、国内外の学会と研究会に参加した。まず、ブラジル研究の国際学会に参加し「介護」に関する最新の研究成果に触れた。さらに国内の研究会で本研究課題の目的と意義を発表して、参加者からコメントを得た。これらの機会を通じて、本研究課題の調査項目の見直しや追加、先行研究のさらなる収集を行うことができた。その際重要視したのが、歴史学の観点の取り入れである。「高齢化」は確かにブラジル社会では近年の現象であるが、歴史学の観点からみると、ブラジルだけでなく他のラテンアメリカ諸国においても、家族の成員間での「ケア」は長きに亘り行われ、正確には、それを可能とする家族構成が築かれ維持されてきた。また、ラテンアメリカでは、カトリック教会が中心となって医療機関の設置と拡充を図ってきたという歴史があり、こうした慈善団体が担った・担う高齢者介護の歴史も見直すことができる先行研究を収集した。ただし、収集した先行研究については十分読み進めることができなかった。よって、次年度に読み進めさらには書評の形についてまとめることで、研究課題に関する分野の知識を固めると同時に、分析の視点を整理する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施初年度である2020年度は、本研究課題の研究基盤を固めることを目的とした。先行研究を読み進めるとともに、学会や研究会に参加した。本研究のテーマである「介護」は、ブラジル研究の国際学会でパネルが必ず組まれるテーマである。ヨーロッパの研究機関に所属するブラジル研究者が中心となった国際学会であるABREの年次大会(9月開催)に参加し、最新の研究成果を得た。また、2021年9月30日にオンラインで開催された、京都外国語大学ラテンアメリカ研究所開催の第17回IELAK研究会にて、本研究課題の背景と目的について発表を行った。参加者からは、今後の研究を進める上で非常に建設的なコメントが多々寄せられた。学会や研究会の参加により、本研究課題の調査項目の見直しや追加、先行研究のさらなる収集を行った。ただし、収集した先行研究については十分読み進めることができず、このことにより、本研究課題の進捗状況はやや遅れている、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、本研究課題の研究基盤を固める。2020年度に研究課題を発表した際、「高齢化」は確かに近年の現象であるが、歴史学の観点からみると、ブラジルだけでなく他のラテンアメリカ諸国においても、家族の成員間での「ケア」は長きに亘り行われ、正確には、それを可能とする家族構成が築かれ維持されてきた、との指摘があった。たとえば、娘のうちの一人を未婚のままにさせ、家族への「ケア」の与え手という役割を担わせた。家族構成については本研究の調査項目に含まれているが、その構成の分析は、参加者から指摘のあった歴史的背景を理解することなしには難しいだろう。また、家庭外の「ケア」の担い手となる医療機関についてもコメントがあった。ラテンアメリカでは、カトリック教会が中心となって設置と拡充を図ってきたという歴史があり、こうした慈善団体が担った・担う高齢者介護の歴史も見直すとよいとのコメントをいただいた。移民からなるラテンアメリカ諸国では、ブラジルの日系人が高齢者介護施設を建設したように、民族系の介入も考慮に入れて、今後の研究を進めたい。これらの作業と並行し、研究課題に関する先行研究を2本の書評の形にして学会誌等に投稿することで、研究課題に関する分野の知識を固め、また分析の視点を整理したい。また、次度末から実施予定のフィールドワークの計画を立て、研究倫理審査を受ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題について、所属機関の研究倫理審査を2020年度内に受ける予定で、調査対象者に渡す研究説明書と同意書のポルトガル語版のネイティブチェックにかかる謝金を計上してあった。しかしながら、調査自体は次度末に開始することもあり、次年度の前半も使って綿密に書類の準備をすることとしたため。
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