研究課題/領域番号 |
21K12392
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 信人 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (50265922)
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研究分担者 |
チャンドラ エリザベス 慶應義塾大学, 国際センター(三田), 講師(非常勤) (80726753)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インドネシア / 華人 / 暴力 / 政治変動 |
研究実績の概要 |
本研究は1940年代のインドネシアにおける政治変動と暴力との関係を歴史的に解き明かすことを目的としている。政治変動と(社会的)暴力との関係に関する従来の研究ではもっぱら、政治変動「後」に発生した暴力を研究対象としてきた。ところが本研究の対象であるインドネシアでは、1998年の政治変動(権威主義体制から民主主義体制への体制移行)が発生した際、もちろん政治変動後に政治的な不安定性が暴力の引き金になったが、体制移行以前の1997年からインドネシア各地では暴力が発生していた。そのなかでも顕著なのが華人に対する暴力であった。 インドネシアの歴史を振り返ってみると、こうした1997年から体制変動が起こった1998年までの対華人暴力は稀有なことではなかった。1940年代は特筆すべき時代であった。1940年代には4回にわたる政治変動(オランダ植民地統治→日本軍政→インドネシア共和国独立→オランダの復帰→インドネシアの主権獲得)が発生した。そこでは政治変動「後」よりも、その「前」に暴力、特に対華人暴力が発生した。 本研究のリサーチ・クエスチョンは、なぜ政治変動の「前」に対華人暴力が発生したのかである。この問いに答えることは、政治変動を誘発する社会的暴力(対華人暴力)が発生したメカニズムを解明することになる。本研究は、その社会的暴力の発生のメカニズムのなかに政治変動が「内包されていた」からこそ、暴力が起こったという仮説を証明することになるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では2021年度にオランダおよびインドネシアでの資料収集、現地インタビュー調査を予定していたが、コロナ禍の影響で海外での調査は全く実施できなかったため。そのため日本国内で実施可能な調査に集中することを余儀なくされた。 2021年に主として実施したのは、三点である。第一に先行研究の収集と批判的整理である。第二に、手元にあるオランダ植民地文書(geheim mailrapporten[オランダ領東インドに関する秘密文書])のなかから本研究に該当する部分の文書のデータ化の作業である。第三に、日本軍政期にインドネシア・ジャワにて刊行されていた『共栄報』をスキャンし、データとして整理する作業である。これらの作業は不十分ではあるが、本研究を遂行するにあたって必要最低限の基本的な情報整理にあたる。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が一段落することを見越して、2022年度にはインドネシアでの調査を予定している。当初予定していたジャワ島(ジャカルタ、スラバヤ、東ジャワ地方都市)での資料収集とインタビュー調査のみならず、21年度の調査過程で調査の必要性を見出したバリ島、スラウェシ島での資料収集とインタビュー調査を実施する計画を立てている。 同時に21年度に引き続き、オランダ植民地文書のデータ化と整理の作業は継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため初年度は申請額の大半を占めていた旅費を執行することができなかった。当初予定ではオランダおよびインドネシアでの調査が実施するはずであった。 翌年度の計画としては、コロナ禍が収束することを見越して、インドネシアでの調査(資料収集とインタビュー調査)を実施する予定である。期間としては3週間強を見越しており、インドネシア各地で調査を実施する予定である。同時に翌年度には、オランダ植民地資料のデータ化、書籍購入にも研究費をあてる計画である。
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