研究課題/領域番号 |
21K12398
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研究機関 | 日本経済大学 |
研究代表者 |
長濱 和代 日本経済大学, 経営学部(福岡キャンパス), 教授 (40839239)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 持続的森林管理 / 住民参加 / エンパワーメント / 測定指標 / 森林統計 / 計量分析 / 自治組織 / 質的分析 |
研究実績の概要 |
「森林保全のために、地域住民の参加とエンパワーメントの如何なる要因が持続的森林利用と管理をもたらすのか」という問いに基づき、本研究は、地域住民の森林管理への参加とエンパワーメントに関する測定指標の理論的枠組みを明確にし、持続可能な森林利用と管理に与える設計指針(条件)を実証的に検討することを目的とする。 初年度は、地域住民の参加とエンパワーメントの関係に関する個々の先行研究の資料・文献のレビューを行い、住民参加ととエンパワーメントを測定するための理論的背景と指標群を明示した。その内容については、国内の2つの研究組織で口頭発表を行い、(1)1990年代以降、住民主体の森林管理の減退傾向が報告、(2)住民参加によりエンパワーメントは高まる、(3)森林管理組織における女性の参加と意志決定能力に着目することがエンパーパワーメントの代用になることを明らかにした。また文献レビューに基づき測定指標を収集、整理した。 2年目は、研究実施計画に基づき、関係文献を幅広く探索し、文献のスクリーニングを行なった上で個々の資料・文献を統合して、国内外の学会での発表と論文投稿を行う。さらにインドのウッタラーカンド州で森林パンチャーヤト(住民による森林管理自治組織)を組織する村落で、世帯を対象とする悉皆調査を実施して、住民の森林利用と管理、意識についての構造的インタビューと林地の調査を実施し、質的分析を目指す。森林パンチャーヤトが組織されているウッタラーカンド州の「州森林統計(UFD)」の個票データを使用することにより、量的分析と質的分析の両側面から、持続可能な森林利用と管理についての設計指針(条件)を提示する。 森林パンチャーヤトにかかわる世帯調査と樹木調査のデータを10年以上蓄積しており、新たな知見を博士論文としてまとめ、昨年は博士(農学)を取得したことは、本研究を推進する原動力となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提出した当初の計画どおり、先行理論研究とレビュー研究発表(日本環境教育学会および環境探究学研究会での口頭発表)を行った。 昨年は、博士(農学)を取得したことから、7月から東京大学大学院農学生命環境科学研究科で農学共同研究員となったので、東大図書館を利用してオンラインによる先行研究レビューができる環境下にある。この状況に感謝しつつ、積極的に国内外のジャーナルを活用することにより、多くの関係文献を幅広く探索し、文献を読み込むことができた。学会での発表だけでなく、英語論文を準備し、"Small-scale Forestry"に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
森林管理における住民参加については、参加の程度とレベル(段階)について、インドの森林パンチャーヤト(地域住民による森林管理自治組織)における量的および質的データから導いた新たな知見を、英語ジャーナルに投稿中であり、今年度(2年目)に発表する予定である。 また昨年度に文献レビューにより収集した測定指標を元に、インド森林統計と村落調査データから多変量解析をすすめ、本研究のテーマに踏み込んだ研究発表を進める。 国内外では以前としてコロナが収束しない状況ではあるが、今年度はインドへの渡航が可能となったことから、さらに現地での森林利用と管理に関する面談調査を実施する。2012年にウッタラーカンド州テーリーガルワールD村で、世帯調査(悉皆調査)を実施しており、今年度中に再度、D村での調査が可能となれば、10年ぶりの世帯調査が遂行できる予定である。森林管理や地域住民の生計について、当時との比較調査が実施できればと計画している。 インドの山村では、2012年以降、10年におよぶ森林パンチャーヤトにかかわる世帯調査と樹木調査にもとづくデータを蓄積してきた。ここから新たに導いた知見を博士論文としてまとめ、昨年度に博士(農学)を取得した。この成果についてはJSPSから研究成果公開促進費が採択いただいたことから、今年度は書籍を刊行する。これにより本研究におけるさらなる「研究のアウトリーチ(発信)」が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
英語の研究紹介ホームページを作成している。また夏に南アジア(インド)での調査を、さらに10月には国際学会(IUFRO)への参加と口頭発表を予定しており(アブストラクトは受理)、助成金を運用する予定である。。
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備考 |
(3)については、今年度中に英語サイトを作成する予定である。
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