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2022 年度 実施状況報告書

住民のエンパワーメントに着目した森林の持続的利用と管理のための設計指針の検討

研究課題

研究課題/領域番号 21K12398
研究機関日本経済大学

研究代表者

長濱 和代  日本経済大学, 経営学部(福岡キャンパス), 教授 (40839239)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード持続的森林管理 / 住民参加 / エンパワーメント / 測定指標 / 森林統計 / 計量分析 / 自治組織 / 質的分析
研究実績の概要

2022年度は、コロナ禍で制約の多い状況下であったが、8月にインドへ渡航して、ウッタラーカンド州テーリーガルワール郡D村での森林利用と管理に関する構造的面談調査を実施した。2012年においても、同村で世帯調査(悉皆調査)を実施しており、10年ぶりの世帯調査により、森林管理や地域住民の生計について、当時との比較調査が遂行できた。
インドの山村では、2012年以降、10年余におよぶ森林パンチャーヤトにかかわる世帯調査と樹木調査にもとづくデータを蓄積しており、この成果については2022年度に研究成果公開促進費が採択いただいたことから、11月に『ヒマラヤの森はなぜ守られたのかーインド・ウッタラーカンド州における森林パンチャーヤトの資源管理』という題目で、九州大学出版会から書籍を刊行した。これにより本研究のさらなる「研究のアウトリーチ(発信)」が期待できる。
海外への研究発信においては、森林管理における住民参加については、参加の程度とレベル(段階)について、インドの森林パンチャーヤト(地域住民による森林管理自治組織)における量的および質的データから導いた新たな知見を、英語ジャーナルに投稿して、“Forest”(査読有)にて公開された。10月には国際森林学会(IUFRO)に参加して口頭発表を行った。英語による研究室紹介ウエブサイト作成して公開した。今後は、文献レビューにより収集した測定指標を元に、インド森林統計と村落調査データから多変量解析をすすめ、本研究のテーマに踏み込んだ研究発表を進める。
教育的貢献としては、研究室に所属している学生たちと国内の持続的な森林利用と管理を実践している地域を訪問して、面談調査とフィールドワークを行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究概要に述べた計画に基づき、2022年度は8月にインド・ウッタラーカンド州で世帯住民を対象とした質的面談調査を実施して、自然文化史研究会の会報で報告をした。12月には質的研究を学ぶ会(日本環境教育学会)では研究内容をまとめ、発表をした。
同州で研究対象とした「森林パンチャーヤト」は、地域住民で組織する森林管理組織であり、コミュニティ林の管理組織として、国内の財産区有林や学校林にも着目して調査をはじめている。この成果について、九州森林学会、村落環境研究会、および環境探究学研究会で、口頭発表を行った。研究発表後の議論では、インド・ウッタラーカンド州で1930年代に出現したパンチャーヤト林の管理と、日本の入会林管理は類似点が多いことがわかり、西日本における入会林研究において新たな示唆を提示できると考えられる。
書籍の執筆については、『ヒマラヤの森はなぜ守られたのか』(再掲)の他に、8月に編著として『学校教育の未来を切り拓くー探究学習のすべて』を環境探究学研究会から刊行した。本文では「PC×Rサイクルに」よる指導原理と評価法を確立するとともに、会員から研究実践を募り、編者として執筆原稿の査読をした。編者として長濱は、第8章15節で「フィールドワークを探究する」を書き下ろし、会員による座談会「探究学習の未来」を司会としてまとめた。12月には『DX時代の人づくりと学び』が刊行され、共著者として第3章を担当し、探究学習についての実践例を紹介した。

今後の研究の推進方策

森林の持続的利用と管理については、インドの参加型森林管理の事例として、森林パンチャーヤトという住民組織と、利用されているパンチャーヤト林に着目して、10年余りの研究を蓄積してきた。収集した測定指標を元に、インド森林統計と村落調査データから計量分析をすすめ、最終年度では、本研究のテーマに踏み込んだ研究発表と発信を推進する。必要があれば、年度内にインドへ渡航してデータ収集を行う。
2012年と2022年のウッタラーカンド州テーリーガルワールD村での構造的面談調査の結果と比較調査の分析に基づき、6月にオーストラリアでの国際森林学会で、持続的な森林管理と利用の視点から、森林の持続的利用と管理のための設計指針について提案を行う。東京大学大学院農学生命科学研究科では、農学共同研究員として櫻井武司先生らと共同研究を進めていることから、国際学会での議論を受けて英語論文を執筆して、国際ジャーナルへ投稿する。
日本国内の森林にも目を向けている。東京大学大学院博士課程に在籍時から国内の林地を訪れ、現地の方から話を伺い、奈良県吉野郡川上村と岩手県上閉伊郡大槌町での事例と研究実践については、学会で報告をしてきた。2019年1月から2021年6月まで、農林水産省で林野庁の林政審議会委員に着任していたことから、森林政策とその課題について議論を重ね、森林の持続的利用と管理について考えを深めてきた。この数年間は、長濱研究室や環境探究学研究会の会員らと九州の林地を訪問して、森林の持続的利用と管理のための条件についてまとめ、発表を行っている。これらの内容について、ジュニア世代にも理解と行動を促せるように書き下ろし、『木が泣いているー日本の森でおこっていること』として、2023年6月に岩波書店から刊行する予定である。日本の森林・林業における課題解決に向けても示唆を与えられるように、本研究課題に全力で取り組む。

次年度使用額が生じた理由

国内および国際学会への参加費用と交通費、国内および海外での調査費用、データ分析のための統計解析ソフトウエアの購入、研究室ウエブサイトの作成と更新、論文執筆のための書籍の購入等を予定している。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] Graphic Era Hill University(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      Graphic Era Hill University
  • [雑誌論文] 黄昏の太宰府便り(第3回)―地方都市が生き残るための条件とは②―2023

    • 著者名/発表者名
      長濱和代
    • 雑誌名

      ナマステ(特定非営利活動法人自然文化史研究会会報)

      巻: 148 ページ: 8-11

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 黄昏の太宰府便り(第4回)―地方都市が生き残るための条件とは③―2023

    • 著者名/発表者名
      長濱和代
    • 雑誌名

      ナマステ(特定非営利活動法人自然文化史研究会会報)

      巻: 149 ページ: 10~11

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Critical Aspects of People’s Participation in Community-Based Forest Management from the Case of Van Panchayat in Indian Himalaya2022

    • 著者名/発表者名
      Nagahama Kazuyo, Tachibana Satoshi, Rakwal Randeep
    • 雑誌名

      Forests

      巻: 13 ページ: 1667~1667

    • DOI

      10.3390/f13101667

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] (3) International Exchange Session / English Report Session2022

    • 著者名/発表者名
      NAGAHAMA Kazuyo、TO Kimiharu、NINOMIYA-LIM Sachi、NOGUCHI Fumiko、WON Jongbin、SAKURAI Ryo、TAMURA Kazuyuki、TAKAHASHI Hiroyuki、KUSUMI Ariyoshi、KATO Tatsuhiro、IIDA Takaya、HAGIWARA Go、IWASA Reiko
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Environmental Education

      巻: 31 ページ: 4_15~18

    • DOI

      10.5647/jsoee.31.4_15

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 黄昏の太宰府便り(第2回)―地方都市が生き残るための条件とは①―2022

    • 著者名/発表者名
      長濱 和代
    • 雑誌名

      ナマステ(特定非営利活動法人自然文化史研究会会報)

      巻: 146 ページ: 4~8

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] インド・ウッタラーカンドからの報告2022

    • 著者名/発表者名
      長濱 和代
    • 雑誌名

      ナマステ(特定非営利活動法人自然文化史研究会会報)

      巻: 147 ページ: 11-15

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 森林の持続的利用と管理のための要因-大分県日田市立高瀬地区における学校林の事例から-2023

    • 著者名/発表者名
      長濱和代,高尾徳次
    • 学会等名
      環境探究フォーラム2023
  • [学会発表] No.54 長濱和代『ヒマラヤの森はなぜ守られたのか―インド・ウッタラーカンド州における森林パンチャーヤトの資源管理』(九州大学出版会、2022年)2023

    • 著者名/発表者名
      長濱和代
    • 学会等名
      ブックトーク・オン・アジア  京都大学 東南アジア地域研究研究所
  • [学会発表] 持続的な自然資源利用と管理に関する考察 ―ウクライナ人留学生の受け入れによる自然観の相違から2022

    • 著者名/発表者名
      長濱和代
    • 学会等名
      日本環境教育学会
  • [学会発表] インド・ウッタラーカンド州の森林利用と管理2022

    • 著者名/発表者名
      長濱和代
    • 学会等名
      村落環境研究会(第19回)
    • 招待講演
  • [学会発表] Van Panchayat System in Uttarakhand and Community Forest Systems in Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuyo Nagahama
    • 学会等名
      Graphic Era Hill University, Dehradun, India.
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Condition of Participation and Role of Women in Community-based Forest Management: A Case of Van (Forest) Panchayats in Indian Himalaya2022

    • 著者名/発表者名
      Nagahama Kazuyo, Tachibana Satoshi, Rakwal Randeep
    • 学会等名
      IUFRO 3.08.00 Small-scale Forestry International Conference 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] 総合的な学習の時間から総合的な探究の時間へ ―探究学習の未来と「環境探究学研究会」の挑戦2022

    • 著者名/発表者名
      長濱和代,向雅生,佐藤真太郎,坂入亮太,水野克己,石田秀輝
    • 学会等名
      日本環境教育学会
  • [学会発表] インド・ウッタラーカンド州の森林パンチャーヤト(Van Panchayat)の事例からーテーリー県D村の森林利用の変遷ー2022

    • 著者名/発表者名
      長濱和代
    • 学会等名
      質的研究を学ぶ会(日本環境教育学会)
  • [図書] ヒマラヤの森はなぜ守られたのか インド・ウッタラーカンド州における森林パンチャーヤトの資源管理2022

    • 著者名/発表者名
      長濱 和代
    • 総ページ数
      220
    • 出版者
      九州大学出版会
    • ISBN
      978-4-7985-0341-7
  • [図書] 学校教育の未来を切り拓く 探究学習のすべて2022

    • 著者名/発表者名
      環境探究学研究会、向 雅生、長濱 和代、五島 朋子、佐藤 真太郎、石田 秀輝
    • 総ページ数
      200
    • 出版者
      合同出版
    • ISBN
      978-4-7726-1497-9
  • [図書] DX時代の人づくりと学び2022

    • 著者名/発表者名
      降旗 信一、金馬 国晴、加納 寛子、佐々木 豊志、長濱 和代、高橋 洋行、田開 寛太郎、岩本 泰、菊池 稔
    • 総ページ数
      160
    • 出版者
      人言洞
    • ISBN
      978-4-910917-01-6
  • [備考] Kazuyo Nagahama’s Laboratory

    • URL

      https://nagahamakaz.net/en/

  • [備考] 本学 長濱和代教授が著書「ヒマラヤの森はなぜ守られたのか」を出版

    • URL

      https://www.jue.ac.jp/information/publication-interview/

  • [学会・シンポジウム開催] Van Panchayat System in Uttarakhand and Community Forest Systems in Japan2022

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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