研究課題/領域番号 |
21K12399
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
佐藤 千鶴子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 主任調査研究員 (40425012)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マラウイ / 南アフリカ / 元鉱山労働者 / 独立移民 |
研究実績の概要 |
本研究は、マラウイ北部から南アフリカ、ジンバブウェ南部から南アフリカという歴史的に文脈の異なる2つの国際移動を取り上げ、南部アフリカの国際移動を1世紀以上にわたり継続させてきた社会的制度の内容を明らかにすることを目的としている。2年目にあたる2022年度はマラウイ北部で現地調査を実施し、元鉱山労働者と現代の独立移民送出し世帯に対する聞き取り調査を通じてマラウイから南アフリカへの2つの形態の移民労働が具体的にどのように行われていた(る)のか、両者の関係性がどうなっているのかについて研究を進めた。 政府間協定を通じてマラウイ北部から南アフリカへ送り出されていた元鉱山労働者への聞き取り調査からは、1974年の飛行機事故を境に、それ以前と以後でリクルートの方法や鉱山での労働条件が大きく変わったことが明らかになった。最も大きな違いとして、飛行機事故後の1970年代後半以降にリクルートされた人びとは単年契約を幾度も更新するため移民労働の期間が長期化したこと、そして移民労働を通じて得た賃金を元手にした村落での経済的蓄積の事例が見られるようになったことが挙げられる。しかしながら、リクルートにかかるコスト増を背景にマラウイから南アフリカの鉱山への労働者の送出しは1988年に終了し、マラウイ人が南アフリカの鉱山へ出稼ぎに行く道は閉ざされた。 独立移民による南アフリカへの移民労働は鉱山労働者の送出しに先行していたが、この形態の移民労働が主流となるのは、マラウイと南アフリカの両国が民主化した1990年代半ば以降である。マラウイ北部における移民送出し世帯での聞き取り調査からは、移民が南アフリカに定住して、マラウイの出身村との絆を断ち切ってしまわないように、出身村に残る親族に対して送金などの経済的支援が継続するようにするためのいくつかの慣行が発展してきたことが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度と2022年度に実施した文献調査、ならびにマラウイ北部での現地調査を通じて、マラウイ北部から南アフリカへの移民労働の2つの形態、そして数世代にわたり独立移民の国際移動を支えてきた親族間ネットワークや親族内・出身村における規範や慣行について研究成果をまとめるための目途はつきつつある。3年目となる2023年度はもう一つの事例であるジンバブウェ南部から南アフリカへの国際移動に関する調査研究に着手する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度初めの計画では、2022年度にジンバブウェ南部から南アフリカへの国際移動に関する文献調査を行う予定であったが、渡航制限が解除されて現地調査が可能となったため、2022年度はマラウイ北部での現地調査を実施し、元鉱山労働者と現代の独立移民送出し世帯に対する聞き取り調査を行った。 2023年度はジンバブウェ南部から南アフリカへの国際移動に関する文献調査に着手し、歴史的な動態について理解を深める。そのうえで、ジンバブウェ南部で予備的な現地調査を実施し、現地の調査協力者とのネットワークづくりをするとともに、聞き取りを実施する地域を具体的に選定していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は現地調査が実施できなかったため研究費を繰り越した。2022年度はコロナ禍のために研究期間を延長していた別の科研費を優先的に使用したため、本研究課題については未使用となり、次年度に繰り越すことになった。 未使用の研究費については、2023年度以降に予定しているジンバブウェ南部と南アフリカでの現地調査、並びにマラウイでの追加的調査のために使用する予定である。
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