研究課題/領域番号 |
21K12406
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩田 健治 九州大学, 経済学研究院, 教授 (50261483)
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研究分担者 |
HANADA EVA 神戸大学, 国際連携推進機構, 准教授 (40581856)
高崎 春華 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 准教授 (40583026)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | EU経済統合 / 単一市場 / 単一通貨 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、(1)2010年代にEU統合が直面した困難の本質を「経済統合論」の理論枠組みを用いて概念的に把握し、(2)①EU単一市場および②単一通貨ユーロの長期的存続を可能とする諸条件や制度の在り方について解明することにある。 2022年10月に研究代表者の岩田が九州大学の理事・副学長に就任し(経済学研究院での科研関連の研究活動と一部教育活動は職務附加により継続)、投下可能なエフォートが低下したため、以上の研究目的達成のために、単独研究から2名の分担者を加えた協働研究に研究体制を切り替えた。 そのため、2023年度は、10月8日に研究分担予定の花田エバ・高崎春華の2名の研究者および研究代表者のもとでEU研究を行っている松下俊平(熊本学園大学)と田中晋(JETRO)とで九州大学東京オフィスにて「EU研究会」を開催し、今後の研究分担の基本方針を定めた。その後、12月13日の正式承認をまって、2024年3月16日には、九州大学伊都キャンパスにて、花田・高崎の2名の分担者に、松下を加え、研究集会を開催した。そこでは、研究代表者の岩田が「科研基盤Cの到達目標と2024年度研究計画(含予算)について 」について報告し、新規参加の分担者2名に対し、本研究のエッセンスについて学術的な観点から踏み込んだ報告とディスカッションを行った。それを受けて、花田からは「中東欧諸国から見た単一市場・単一通貨」について、また高﨑からは「欧州グリーンディール展開過程のEU単一市場とそのEU近隣諸国への影響」について報告が行われ、本研究の目標達成に向けたディスカッションが開始されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年10月に研究代表者の岩田が九州大学の理事・副学長に就任し(経済学研究院での科研関連の研究活動と一部教育活動は職務附加により継続)、投下可能なエフォートが低下したため、単独研究から2名の分担者を加えた協働研究に研究体制を切り替えた。そのため、本研究課題三年度の2023年度は、最終年度である2024年度を見据えて、3名による共同研究体制を速やかに構築することにエフォートの大半が投下される形となった。既に、23年10月の事前打ち合わせと、同年12月の分担者追加承諾後の24年3月の最初の研究集会を通じて、研究目的であるEU単一市場と単一通貨ユーロが直面する現下の諸問題を、経済統合理論の観点から解明することの意義を確認することができた。その点で、本研究課題は、最終年度におけるキャッチアップに向け、新体制を構築することに概ね成功したものの、研究活動および成果の点で若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的の中の「(1)2010年代にEU統合が直面した困難」とは「単一通貨ユーロ」を襲ったユーロ圏政府債務危機と「単一市場」の縮小を意味する「英国のEU離脱(ブレグジット)」であったが、その後22年に始まるロシアによるウクライナ侵攻により、EUを取り巻く政治経済的環境は激変し、統合は新たな「困難」に直面することになった。 2023年度の研究分担者追加により、単一市場・単一通貨を中東欧および地中海近隣諸国の観点から分析することが可能となり、また欧州グリーンディールが単一市場・単一通貨に及ぼす影響についてもより主題的に考察することが可能となっている。そこで、新規分担者を含めた新たな陣形で、以下の研究を進める。 研究目的(1)については、ウクライナにおける戦争がもたらしている新たな困難の本質を「経済統合論」の理論枠組みの中で解明するとともに、ユーロ制度改革ののための金融同盟(=銀行同盟+資本市場同盟)の統合理論上の位置づけについて新たに検討を行う。 研究目的(2)①の単一市場については、EUによるコロナ禍からの復興基金やそのための共同債発行の現状についてデータの収集を行い、専門家とのディスカッションを行う。「欧州グリーンディール」についても引き続き資料収集と分析を行う。 研究目的(2)②の単一通貨ユーロについては、コロナ・ショック前後から観察される北の諸国と南の諸国との実質経済成長率の逆転現象の解明に努める。そのために復興基金が北と南の双方に与えた影響を分析した先行研究のサーベイと、ヨーロピアン・セメスター関連資料の当該視角からの分析を行う。並行して、世界経済のデカップリングがユーロの国際的役割にもたらす影響に関しても引続き分析を進める。 以上で得られた多様な知見については、順次学会報告や論文としての公刊を追求するとともに、全体の議論の収束を図りつつ最終取り纏めにつなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、研究打ち合わせと報告会のための出張がコロナ禍で実施できず、オンラインでの研究打ち合わせとなり、また著書等の執筆対象の多くが直近の動きにフォーカスしたものであったため必要な文献・資料の多くがオンラインで入手でき関連文献と資料への支出が抑制された。コロナ禍も相俟って関連文献・データの整理の謝金の支出も不要となった。その結果、425,211円の繰越が生じた。2022年度は、新型コロナ禍も終息に向かい、対面での講演及び専門的知識の提供のための招聘謝金を支出し、また文献・資料についても歴史・理論の双方から代表的文献や資料を購入することができた。しかし、前年度繰越分の全てを使用するには至らず、294,432円の繰越が生じた。 2023年度は、研究代表者の大学本部理事・副学長就任に伴い、当初予定の国際学会参加ができず、文献の収集も進まなかった。他方、分担者を加えた新しい共同研究体制構築のために国内出張旅費は有効活用できた。その結果、前年度繰越額を上回る1,012,272円の繰越となっている。 次年度は、繰越額の多くを分担者に配分し、福岡や神戸などでの研究会開催のための国内旅費のみならず、研究分担者による欧州調査等のための外国旅費などで、計画的かつ有効に活用する計画を立てている。
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