研究課題/領域番号 |
21K12412
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
杉浦 克明 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40445739)
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研究分担者 |
井上 真理子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30414478)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 森林環境教育 / ツシマヤマネコ / ツシマウラボシシジミ / 対馬 / 林業 / 下層植生 |
研究実績の概要 |
本研究は①地域のシンボルの希少動植物に着目した地域の教育の実態把握および②地域の農林業の現状調査から,③地域の固有生物(天然記念物)をキーワードとした森林環境教育の展開の可能性を検討することである。その研究対象地を、ツシマヤマネコが生息する長崎県対馬市とオオサンショウウオが生息する鳥取県日南町とした。 当該年度は新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきたため、離島である対馬への現地調査を行った。長崎県の対馬市は朝鮮半島に近く、大陸系と日本列島系の生物が生息する独特の生態系を有しており、固有種が存在している。そこで、本研究の目的は、長崎県対馬市を対象に、地域固有の生物に関する教育の中で、森林・林業に関連した内容がどのようにどの程度扱われているのかを明らかにすることである。方法は2022年11月に環境省対馬野生生物保護センター、対馬市役所、長崎県の事業の一環として普及・啓発活動をしている関係者に聞き取り調査を行った。その結果、絶滅危惧IA類(環境省レッドリスト)であるツシマヤマネコとツシマウラボシシジミの保全に関連した活動が中心的に行われていた。ヤマネコに関しては、森林内の下層植生の重要性や、ヤマネコの食資源となるネズミの生息環境にとってシイ等のドングリが重要となること等が説明の中心となっていた。ウラボシシジミに関しては、話題の中心は食草であるヌスビトハギ等へのシカの食害であった。時間の制約もあり、森林・林業の話題までには至っていないことが明らかとなった。 前年度行った鳥取県日南町の取り組みとの違いが見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の状況が改善されたため、今年度は長崎県対馬市の現地調査を中心に行った。前年度の鳥取県日南町の調査とあわせて対象地での基礎的な資料を取集することができた。併せて、長崎県対馬市の木庭作の過去から現在までの変遷について空中写真と地形図をもとにGIS(地理情報システム)を用いて把握も進めることができていることから、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、鳥取県日南町と長崎県対馬市の両対象地の現地に出向き、これまでに得られた基礎資料を基に、今年度はより具体的な内容に踏み込んだ聞き取りや資料収集を行う予定である。長崎県対馬市のGISの地図情報をもとに木庭作の変遷の過程についてはだいぶ解析が進んだため、今後は鳥取県日南町の土地利用の変遷についても分析する予定である。行政主体の固有種の普及啓発についてはおおむね明らかになってきた。今後は、林業事業体や民間が主となった森林環境教育の取り組み事例を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の前半はコロナウイルス感染症の影響もあり、現地調査を行うための日程調整に支障が生じた。そのため、秋以降に調査の日程の目途がついてきたが、他の予定との兼ね合いから思うように日程の調整ができなかったことが原因である。次年度は2つの調査対象地への出張を予定しているのと、研究成果の掲載料に充てる予定である。
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