研究課題/領域番号 |
21K12421
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
能勢 美紀 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画部, 海外研究員 (70866798)
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研究分担者 |
寺本 めぐ美 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (40788981)
熊倉 潤 法政大学, 法学部, 准教授 (60826105)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クルド / ウイグル / 文献調査 / 先行研究レビュー / 出版物 |
研究実績の概要 |
本研究では、クルド人の出版活動と民族主義運動の相互関係をウイグル人のそれと比較しつつ明らかにすることを目指している。 2021年度は、クルド人とウイグル人の出版活動と民族運動の状況について明らかになっている点について、先行研究および本研究の参加者による研究の整理を行いながらの議論と意見交換を行なった。具体的には、クルド人については、能勢が「1920年代から現在までのクルド人の在外出版の状況と民族運動についての概要」をまとめ、寺本が「オランダのクルド人第2世代、第3世代の民族運動と出版物について」を報告した。熊倉は比較対象であるウイグルの事例について、「ウイグルの在外出版の背景と現状」を報告した。これにより、同じ「国なき民」としてのクルド人とウイグル人の共通点と相違点、またそうした相違をもたらした要因について考察を深めることができた。さらに、そのような要因が出版状況や出版物の内容に与える影響についても、今後の研究につながる予備的な検討を行なうことができた。 出版状況の全容の解明に向けては、トルコの書店を通じてクルド関係の資料の収集を行なったほか、研究代表者がパリのクルド研究所(Institut Kurde de Paris)にて出版物の調査と研究者やライブラリアンへの聞き取りを行なった。また、収集した資料およびクルド研究所での出版物調査をもとに目録と解題の作成に着手した。 パリのクルド研究所の調査からは、クルド人がナショナル・ライブラリーを持たず、使用する文字も居住する各国が使用する文字に分断されていることや、同一の著者が異なる表記(発音やエザーフェの有無等)で登録されていることによる著者標目の未整備といった課題が明らかになった。こうした課題の存在が、クルド人の出版物の収集・整理と全容の解明に大きな障害となっていることが改めて確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は新型コロナウイルスの影響から、当初計画していたトルコでの調査は叶わなかったが、研究開始時よりコロナウイルス等で調査が叶わなかった場合には郵送による資料収集を行うことや、すでにある研究ネットワークを活用したオンラインでの情報収集を行うことを予定していたため、スムーズに切り替えを行うことができた。結果として、トルコの書店からの資料収集を行い、文献調査を進めることができている。また、本科研に参加する研究者間の議論もオンライン会議システムを使用することで十分な意見交換をすることができており、現在のところ大きな障害は出ておらず、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度については、2021年度に行なった研究の整理と議論を踏まえつつ、実際の出版物の内容を精査し、出版活動と民族主義運動の相互関係の解明に向けて論理的・実証的研究に着手する。国内外の感染症の状況と規制の有無に応じて、現地での調査を行うことも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、トルコへの出張を取りやめたため。次年度以降、感染症の状況をみながら出張することを計画している。
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