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2022 年度 実施状況報告書

ロシアと中国・旧ソ連友好国の関係回復の検証:戦後国際秩序へのインパクトの観点から

研究課題

研究課題/領域番号 21K12423
研究機関広島市立大学

研究代表者

加藤 美保子  広島市立大学, 付置研究所, 講師 (70612018)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードロシア / 旧ソ連地域 / 中ロ連携 / 同盟 / 国際秩序 / ウクライナ戦争 / グローバル・イースト
研究実績の概要

本プロジェクトの第一の目的は、中ロ善隣友好協力条約締結以降のロシアと中国の連携体制の性質を構造的・多角的に再検討し、なぜこの連携はこれまで決定的な対立を回避しつつ耐久性を高めてきたのかを考察することである。これを踏まえて、第二の目的は、アメリカ主導で形成・維持されてきた第二次世界大戦後の国際秩序に対する中ロ連携のインパクトを検討することである。2022年2月以降続くロシアによるウクライナ侵略(以下、露ウ戦争)により、ロシアを取り巻く安全保障環境、国際関係、経済関係は大きな影響を受けている。この状況は、本プロジェクトの目的と大きく関わるものであることから、2022年度は、国際情勢の現状把握に大きな労力を費やした。
露ウ戦争の勃発後、背景について時系列的に整理し、国際社会の反応とその背景について所属先のシンポジウムやマスメディアで発表した。この内容を、一般向けに書き起こしたものを広島平和研究所ブックレットVol.8『広島から戦争と平和を考える』に寄稿した(「第5章 ウクライナ戦争ーロシア外交の観点から」)。また、欧米が呼びかける対ロシア経済制裁網に参加しなかったり、国際連合総会でのロシア非難に関する決議で「反対」「棄権」「無投票」を選択するグローバル・サウスに属する諸国の立場や、戦争が日露関係にもたらすインパクトについて分析を行い、NIRA総合研究開発機構のウェブサイト上に掲載された。
本来の2年目の課題は、日米同盟、日韓同盟、クアッドに対するロシアの認識の変化を検討することであった。しかし露ウ戦争を受け、欧米との協調に失敗した1990年代に注目し、チェチェン戦争、コソヴォ紛争、ロシア-グルジア戦争の過程で、国家主権規範と自決権規範の恣意的運用を巡ってロシアと欧米諸国の対立が顕在化する過程を分析し、国際政治学会で報告を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ感染症や戦争勃発による海外渡航制限のため、予定していた海外での聞き取り調査を延期した。しかし、オンラインで国際学会のセッションに参加したり、セミナーを行うことができたので一定の進捗と成果を得ることができた。
2022年度は、露ウ戦争が起きたことにより、本プロジェクトの前提や目的にどのような影響が生じるか見極めが必要であった。そのため、予定していた研究計画の通りに研究を進めることよりも、現状分析に注力することになった。しかし、その結果、本プロジェクトが対象としている中国、インドをはじめとする旧ソ連友好国・同盟国とロシアの関係が、今後の国際秩序の動向に極めて重要な影響を及ぼすことを再確認することができた。当初の研究計画に若干の遅れと変更が生じているが、国際情勢の変動を考慮すると、今後の研究の方向性を明確にするためには必要な作業であったと考えている。

今後の研究の推進方策

「研究実績の概要」で述べたとおり、中ロ善隣友好協力条約締結以降のロシアと中国の連携体制の性質を構造的・多角的に再検討するという第一の目的については、露ウ戦争後も協力のレベルが落ちていないことを念頭に置きつつ、二国間の制度的分析と、中ロを取り巻く関係諸国の勢力バランスの分析の両面から研究を進める。
一方、アメリカ主導で形成・維持されてきた第二次世界大戦後の国際秩序に対する中ロ連携のインパクトを検討するという第二の課題については、検討対象とする地域と時間軸をより広く捉えてみたいと考えている。具体的には、露ウ戦争後に露呈した、国際政治におけるグローバル・サウスや旧ソ連構成国の独自路線の動きに鑑みて、中ロ連携を冷戦後の旧社会主義陣営=グローバル・イーストの国際関係の再編の文脈に位置付け直して検討してみようと考えている。

次年度使用額が生じた理由

感染症や戦争勃発による海外渡航制限により、当初予定していた海外での聞き取り調査を見合わせたため、旅費に未使用額が生じた。次年度は、調査地の変更や国際学会への参加を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Competing Sovereignty Regimes Within Northeast Asia2022

    • 著者名/発表者名
      Mihoko Kato
    • 雑誌名

      Geo-Politics in Northeast Asia (Akihiro Iwashita , Yong-Chool Ha , Edward Boyle, eds)

      巻: - ページ: 157-170

    • DOI

      10.4324/9781003288039-12

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] War in Ukraine and the Security in East Asia2022

    • 著者名/発表者名
      Mihoko Kato
    • 学会等名
      The Seventh Annual Conference of the Asian Borderlands Research Network (ARBN)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 冷戦後ロシアの多国間外交から見る欧州の分断2022

    • 著者名/発表者名
      加藤美保子
    • 学会等名
      日本国際政治学会 2022年度研究大会(ロシア・東欧分科会Ⅰ)
  • [備考] 「ロシアのウクライナ侵攻とアジア―ロシアの軍事・外交政策と今後の地域秩序」NIRA総合研究開発機構

    • URL

      https://www.nira.or.jp/paper/research-report/2022/102207.html

  • [備考] 「ウクライナ戦争ーロシア外交の観点から」広島平和研究所ブックレット8『広島から戦争と平和を考える』

    • URL

      https://www.peace.hiroshima-cu.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2022/08/HPI-Booklet-Vol.8.pdf

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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