研究課題/領域番号 |
21K12430
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小柏 葉子 広島大学, 人間社会科学研究科(社)東千田, 教授 (30224091)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | パブリック・ディプロマシー / 地球温暖化問題 / 太平洋島嶼国 / トランスナショナル |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、本研究のキ-概念であるパブリック・ディプロマシーの要素の1つとして、コミュニケーションに焦点をあて、当該国と外国市民との間でインターネット等を通じ、どのように双方向的な情報や意見の交換が行われているか、国内研究調査機関において、補充的な関連資料の調査を進めた。また、これらの文献を整理し、分析を行った。さらに、パブリック・ディプロマシーのいま1つの要素であるネットワークについて、当該国が外国市民に向けて働きかけを行う際、NGOなど国内外の非国家主体とどのように連携を図っているのか、関連文献を収集するとともに、国内研究調査機関において、関連資料の調査を実施し、整理、分析した。 こうしたこれまでの研究成果に基づき、地球温暖化問題をめぐって、オーストラリア、ニュージーランド両国と意見の対立をみた太平洋島嶼国が、地域機構である太平洋諸島フォーラムを通じたそれまでの外交活動から離脱し、それによって、オセアニアの地域秩序に変容がもたらされたことを分析して発表を行うとともに、これを論考としてまとめ、本研究課題である太平洋島嶼国による地球温暖化問題をめぐるパブリック・ディプロマシーの背景要因について明らかにした。さらに、本研究課題とも関連するオセアニアにおける地域秩序の変容を受け、新たな地域秩序構築の試みとして登場した「青い太平洋」戦略が、米中対立の文脈の中で、地球温暖化問題を柱の1つとして位置付けるなど、太平洋島嶼国にとってオポチュニティを広げる一方で、米中対立に巻き込まれるリスクを高めていることを考察した論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、これまで新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、思うように行えなかった国内研究調査機関での資料調査を計画的に進めることができ、文献による考察の点では研究を進展させられた。ただ、海外における現地調査については、新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響から、現地における医療体制が脆弱化し、新たな感染症の流行につながったことから、実施を見送ったため、その面では研究の進捗に遅れが出た。また、本研究課題に関する海外で出版予定だった複数の研究文献が大幅な刊行の遅れなどによって、本年度は入手することができなかったことも、海外での最新の研究動向を知るうえで研究の進捗に影響をもたらした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の研究の推進方策については、引き続き国内研究調査機関における資料調査を行って分析を進めていく予定である。また、海外現地調査も状況を見極めつつ、実施を図っていくつもりである。あわせて、本研究課題に関連する現地からの関係者が夏頃来日する予定であり、その際、聞き取り調査を行うことを検討している。本年度入手できなかった関連研究文献についても、今後は順次刊行される予定であり、最新の研究動向を把握し、本研究課題の推進に役立てることができるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延が世界的に鎮静化したものの、本研究課題で海外調査を予定していた現地の保健医療状況が悪化したため、調査の実施を見送ったことから、次年度使用額が生じることになった。また、本研究課題に関する海外で出版される予定だった複数の研究文献の刊行が遅れ、年度内に納品されなかったことにより、次年度に費用として持ち越すことになった。さらに、研究補助人員についても、新型コロナウイルス感染症明けの人員不足の影響を受け、適任者を確保することができず、次年度使用額が生じる結果となった。 次年度は、使用額から海外現地調査の実施を図るとともに、本年度に納品が完了しなかった海外で出版された関連研究文献の支出にあてる心づもりである。研究補助人員についても、適任者を確保し、次年度使用額から支出を行う計画である。
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