研究課題/領域番号 |
21K12436
|
研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
吉田 則昭 立正大学, 人文科学研究所, 研究員 (90823609)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | カザフスタン |
研究実績の概要 |
2023年度は、ソビエト文化の送出先であるモスクワ出張を計画していたが、昨今のロシア・ウクライナ間の国際情勢もあり、モスクワへの渡航がまだ難しい状況にあったため、言語、文化状況も似ているカザフスタンに出張した。 1940年~1950年代のソビエト映画の資料調査のため、カザフスタン国立図書館において、当時の文化交流機関、満州などに関するロシア語、カザフスタン語の資料を検索し、書籍、雑誌、新聞記事を閲覧した。特にVOKS(全ソ連邦対外文化連絡協会)の月刊誌である1940年代の『VOKS Bulletin』や日ソ文化交流関連のロシア語文献を閲覧できたことは今後の研究に資するものとなった。 口頭報告としては、「冷戦期科学技術政策の変容に関する国際比較研究 ―スプートニク事件を転換点として―」(19H01456)の研究会で討論者を務め、2023年7月、20世紀メディア研究会で開催された同研究会のシンポジウムでは司会を務めた。 このように史料収集ではいくつかの前進があったものの、集めた史料を分析して研究成果としてまとめるだけの時間的余力がなく、史料の分析もあまり進展がないまま、見るべき成果のない一年になってしまった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、特に戦後、日ソ文化交流が発動した時期に焦点を当て、ロシア革命前後と1920年代前半の主要な政治アクターに着目し、ソ連の文化交流政策に関わった主要な外交官、共産党の関係者の対日政策観の形成と変動を追究した。 とりわけ、1945年以降、ソ連政府側はどのように東アジアにおける文化外交に着手したのか、どのように日本にアプローチしたのか、革命外交と国益重視を検討したあらゆるアクター間の議論は、いかなる形で展開されたのか、地方と中央の対日観の実態を把握しようと務めた。 また、引き続き史料調査を行いつつ、日本、ロシア、欧米などの研究者と構築した研究ネットワークを活用しながら、これまでの調査で発掘した史料に基づき、国内外において研究を進めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、ロシア側の一次資料からとりわけ企業(出版社・商社)、日ソ文化交流団体についての調査を行いながら、関係者へのインタビュー、研究者らとの知見の交換を予定している。 今年は最終年度にあたり、1950年代にかけての日ソ関係に関する論文を刊行し、日本または国際学会において報告を行う予定である。最大の関心は、戦後日ソ関係が発動した時期のソ連側の対日政策の全体像を包括的に分析しながら、戦前戦後の連続性を明らかにし、その後の日ソ関係の変動と結びつけ、これまでの研究成果をまとめつつ、今後の研究のために問題提起をすることである。 なお、当初の予定にあったアメリカでの史料調査は、本年においては実施困難となるが、渡航が可能になりつつあるロシア(特にモスクワ、サンクトペテルブルグの公文書館)において、本研究助成で初めての現地調査を行うこととし、総合的な最終研究報告を完成する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年度においては、ロシア・ウクライナの国際情勢もあり、ロシアの主要都市モスクワなどへの調査出張が当面見込めなかったため、次年度に研究費を繰越使用することとした。これは本研究助成の最大の目的と考えるロシア公文書館での現地調査に、本研究費を使用したいという強い研究遂行上の願望があるためである。
|