研究課題/領域番号 |
21K12439
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
戸田 徹子 津田塾大学, 言語文化研究所, 研究員 (50183877)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 米国フレンズ奉仕団 / AFSC / LARA / クエーカー / 占領期 / 戦後 / 戦後復興活動 / 国際支援活動 |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナ禍で海外渡航が制限されていたため、予定していたAFSC本部資料室における日本関係資料の所蔵調査を実施できなかった。そこでAFSCが改めてウェッブ上に提供するようになった定期刊行物や在米中の研究者を通して入手した資料を使って、AFSCによる戦後日本復興支援活動の組織化を追う作業をした。その過程でAFSCの戦中の活動と占領期/戦後の活動には明白な継続性があり、この事実に基づき研究方法を変更する必要があると判断し、後述(今後の研究の推進方策)の通り、研究計画を見直すことにした。
今年度の具体的な研究成果は以下の通りであるが、これにはAFSCの社会改革的活動を支えた日本人に関する研究も含まれている。①日本においてAFSC研究は少ないことから、複数の研究会に招かれ発表の機会を得た。戦後福祉改革期研究会と移民研究会においては、第一次世界大戦以降の国際支援の黎明期のなかにAFSCの始まりを位置づけ、さらに戦後日本における活動の概略を紹介した。質疑応答を通して、本研究の意義を確認することができた。②本研究が研究対象とする占領期/戦後のAFSCの活動においては、日本人クエーカーとその関係者の貢献が大きかった。彼らの多くが内村鑑三もしくは新渡戸稲造の弟子たちであったことから、内村と新渡戸のアメリカのクエーカーとの関係について論文を書いた。アメリカの学会誌に投稿予定である。③なかでも戦後の女子高等教育改革を指導した上代タノと藤田たきは共にクエーカーで、AFSCの平和活動と国際交流活動を担っていた。これをアメリカの学会(第49回中部大西洋地区アジア学会)で発表した。Zoomによる発表だったが、新事実の解明として高評価だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた資料調査は実施できなかったが、不十分ながらも新たに入手した資料の範囲内で、AFSC本部とフィラデルフィア年会ミッション・ボードの開戦時の動向を解明することができた。引き続き同様の分析作業を通して、AFSCの日本復興支援プログラムを検証できる可能性が見えてきた。さらに、海外調査と資料整理に予定していた時間を、占領期/戦後のAFSC活動に貢献した日本人(とくに上代タノと藤田たき)の人物研究に充て、学会発表することができた。それゆえ、検証の順番は逆転してしまったものの、作業は順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では戦後日本におけるAFSCの活動を救援と改革の2側面において検証する予定であったが、終戦後、AFSCがアメリカにおいて1952年ぐらいまで日系アメリカ人の再定住支援活動を継続していたことが判明し、戦後のAFSC の活動をより包括的に理解するために、アメリカにおける再定住支援活動も研究対象に含め、日米両国における支援活動を網羅すべきと判断した。研究代表者は日系アメリカ人研究の専門家ではないことから、2022年度からは日系アメリカ人研究を専門とし再定住について詳しい者を研究分担者に加える。AFSCは本部がフィラデルフィアにあり、日系アメリカ人の同地への再定住を奨励した。AFSCが同地の戦時定住局支部といかなる協力関係を築き、どのような支援活動を展開したのかを、AFSCと戦時転住局の資料等を用いて解明してもらう予定である。これにより研究計画と研究費配分の見直しが必要となる。
なお、研究代表者は当初の研究計画通り、戦後日本におけるAFSCの活動を救援と改革の2側面において検証する予定である。まずはAFSC本部資料室の1950年代の日本関係資料の所蔵調査を急ぎたい。今後、研究分担者と研究の方向性とテーマをさらに検討し、定期的に進捗状況を確認するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ禍で海外渡航が制限され、予定していたアメリカでの資料調査を実施できなかった。これにより大幅な未使用額が生じた。とりあえず手元にある資料の分析を先行させ、研究論文作成にあたっている。この作業が終わり次第、アメリカでの資料調査に着手したい。また研究計画の見直しにより研究分担者を追加したので、予算の一部をそちらに回す予定である。
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