研究課題/領域番号 |
21K12440
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
内藤 耕 東海大学, 文化社会学部, 教授 (30269633)
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研究分担者 |
倉沢 愛子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 名誉教授 (00203274)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新型コロナ禍 / デジタル・トランスフォーメーション / ジャカルタ |
研究実績の概要 |
2021年度は、インドネシア社会が新型コロナ禍に対してどのように闘っているかを、ジャカルタ市南郊のレンテンアグンという一つの町内を例にとって考察した。古くからの住民に対して70年代以降地方からの移住者が増えた地域である。 本研究においてはこの町の全体ではなく、ある一つのRT(エルテー)と呼ばれる隣保組織を例にとり、コロナ禍で渡航ができないため住民からTV電話等で聞き取りをするなどして調査を実施した。 今では数の上では外来者が地の人々を凌駕しているが、旧来の住民と外来住民の間で二極分化は見られず、隣保組織などを通じて双方は日常的にかなり緊密な関係を維持している。コロナ対策においてインドネシア政府は、このRTという小さな単位(本調査地の場合約200世帯)ごとに感染状況を把握し、危険度を測定したり、ロックダウンしたりしている。また住民も自ら身を守るために、RTの外との物理的な断絶を課して部外者の侵入を阻止したりしている。またワクチン接種や、援助物資の配布などもRTを単位として行われている。少なくとも表面的には、両者の間の対立は発生していない。交流を持ちつつ生活している。それに際してはRT長(住民から選ばれたボランティア)の役割は大きい。 21年度は現地調査ができなかったため、TV電話による聞き取りなどが中心となった。その範囲では、従来から続くコミュニティのつながりがコロナ禍への対応にあたって十分機能しているように評価できた。DXの進展などマクロ的にはある程度把握できたものの、生活への具体的な影響についてはアンケート調査など現地に赴いた調査が今後必要となってくる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
想定よりもコロナ禍による渡航制限が続いていて、現地調査がまったくできなかった。そのためコミュニティの調査は従来からつながりのあるインフォーマントへのTV電話による聞き取りが中心となった。また、DXの進展もネット上の情報やメディアの報道を追うにとどまった。文献の収集も、書籍の輸入に頼らざるを得ず、内容を十分確認できないまま発注するしかなかった。 しかしながら、21年度はこうした制約はある程度織り込んでいたので、致命的な遅れとはなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
渡航、入国の制限も大きく緩和され、22年度は現地調査が可能となっている。ジャカルタ・レンテンアグン地区での調査のほか、DX推進や労働政策に関わる官庁や機関へのアプローチを進めていく。 ただし、新型コロナ禍とは関わりなく、最近、インドネシア政府の調査許可取得手続きが大きく変わっており、それへの対応については細心の注意を払う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍による渡航・入国の制限があったため、現地での調査が行えず十分な予算執行ができなかった。旅費についてはもちろんのこと、人件費・謝金についても現地調査で使用する計画であったため、大きく繰り越しとなった。 22年度になって渡航・入国の制限も撤廃されたため、今年度は複数回(研究代表者は夏と春の2回、分担者は夏の1回)の調査を予定している。これにより研究の遅れを挽回するとともに、予算の執行も十分可能となる。 ただし、航空機の燃油等の値上がりや円安から経費がかさむことも予想されており、慎重な予算執行に務めたい。
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