研究課題/領域番号 |
21K12453
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
大浦 由美 和歌山大学, 観光学部, 教授 (80252279)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 企業の森林づくり / 森林サービス産業 / 国民参加の森林づくり / 森林の多面的利用 / 地域観光 / CSR |
研究実績の概要 |
本研究は、2000年代以降に活発化した企業のCSR活動としての森林保全活動によって生じた「企業と森林または農山村地域との新たな関係性」に着目し、こうした取組が地域観光の発展に与える影響について明らかにしようとするものである。2021年度は、企業の森林づくり活動をめぐる全国的な動向について、既存の資料を中心に調査した。主な結果は以下の通りである。 企業による森づくり活動は、ESG投資の拡大や、気候変動問題への注目の高まりを背景に、近年でも民有林を中心に緩やかに増加している。林野庁の最新の調査結果(令和3年度実施)によれば1,118箇所(民有林のみ)、年間50-70haほどの面積において植樹などの活動が行われている。ほぼ全ての都道府県においてこうした活動を支援する組織または制度があり、多くが活動中であるが、なかには休眠状態のものもある。具体的な活動としては、地域住民や森林づくり組織、森林組合等との協働による森林づくり活動の他、基金や財団を通じた森林再生活動支援、企業の所有森林を活用した地域貢献、森林所有者との協定締結による森林整備など、多様に展開している(R2森林・林業白書p.87)。現時点での支援体制側の課題としては、細やかな支援を継続するために、マッチングからその後のフォローまで一括で行える組織の必要性や、コーディネート人材の育成が挙げられている(令和3年度実施調査)。 他方、SDGsへの社会的関心の高まりを背景に、民間企業等も多様な活動に取り組みつつある。持続可能な森林経営はSDGsの17目標のうち、主に14目標達成に寄与するとされ、注目されている。また、「経団連生物多様性宣言(2018)」において、事業活動のなかに環境活動を取り込む「環境統合型経営」や「地域固有の自然資本を活用した地域創生への貢献」が掲げられ、森林や農山村地域における共創的な取組への関心が高まりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は全国的概況の調査と事例や基礎資料の収集を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大により、首都圏等への出張を控えなければならなかったこと、また、本テーマに関する近年の動向をある程度把握できるような資料の入手に時間がかかり、アンケートの作成が遅れてしまったこと、加えて、極めて重要度の高い学部運営業務に携わらざるを得なくなり、本研究へのエフォートの配分に支障が生じてしまったことが理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
・企業の森林づくり活動の全国的概況に関する1次データ収集のため、都道府県および森林管理局等へのアンケート調査に早急に取り組む。その際に、アンケート調査会社などへの業務委託も検討し、効率的に調査・分析を遂行する。 ・各自治体や企業、現地組織へのヒアリング調査については、現地調査と並行してwebミーティングなどのツールも有効に活用し、効率的なデータ収集に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は全国的概況の調査と事例や基礎資料の収集を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大により、首都圏等への出張を控えなければならなかったこと、また、本テーマに関する近年の動向をある程度把握できるような資料の入手に時間がかかったこと、加えて、極めて重要度の高い学部運営業務に携わらざるを得なくなり、本研究へのエフォートの配分に支障が生じてしまったことが理由として挙げられる。2022年度は、前年度の助成金を使用して全国的概況調査(アンケート調査)を、調査会社への業務委託も視野に入れて早急に実施する計画である。
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