研究課題/領域番号 |
21K12454
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
山本 清龍 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (50323473)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 山岳地域 / 非生物多様性 / 人新世 / 複合的システム / 比較分析 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症パンデミックの事情から、2021年度は調査の一部しか実施できなかった。主な原因は現場における諸制限、一部の当事者の不在や、対面での調査の実施困難であった。このような事情にもかかわらず、研究課題に関する文献調査、研究協力者とのオンライン会合などを行い、一部の現地(富士山)では聞き取り調査調査を実施した。また、山岳地域の「非生物多様性」(Geodiversity)について世界各地の事例研究から情報を整理し、保護地域の管理や保全において非生物多様性の位置付けについて理解を得ることができた。また、非生物多様性の評価方法、とりわけ今回の研究の主な特色でもある質的研究方法の可能性について研究者同士で議論を進め、一定の理解を得ることができた。さらに、米国の国立公園管理における非生物多様性の評価取り組みに注目すると同時に、非生物多様性と生物多様性の接点に関する網羅的議論や異なる観点・解釈から情報や論筋の整理を行なった。現在文献調査に基づいた論文一件を書き終え、投稿の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症パンデミックによる諸制限、現場での当事者の不在や、対面での調査が困難であったこと。また同一の理由から、海外の協力者との交流などにおいてもやや遅れが発生している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、現場における調査や分析を継続して行う予定である。今回の調査では、非生物多様性の代表として具体的に以下の項目に焦点を当てる。 (1) 北アルプスでは、過去の氷食(カール地形、U-字型谷形成、雪渓形成など)、多重隆起や、進行中の侵食現象(凍結作用、河川、非対称山陵、斜面崩壊など)に注目し、それぞれが生み出した景観の多様性を調べてまとめる。(2) 富士山では第四期の火山活動、比較的に新しい火山堆積物や、それらの侵食に伴う発達中景観多様性について理解する。(3)大雪山では古い火山地形と新しい火山堆積物、永久凍土、凍結作用の組み合わせが生み出した多様性を調べ、まとめる。(4) 屋久島(追加検証地)ではプレート境界における隆起や火山活動・降雨による景観多様性と生態系との接点についてエビデンスをまとめる。調査方法として、有識者への聞き取りや参与観察実施すると同時に、GoProによる連続撮影や一眼レフカメラによる撮影を繰り返し、ビジュアル・メソッドを通じての記録・分析を行う。また、GISによる空間分析なども行なったうえ、それぞれの方法から得られたデータの比較分析・総合分析に着手する。このようにして、それぞれの地域から見え非生物多様性の局所的特徴をまとめながら、それらを生み出した長時間にわたるプロセス・メカニズムも非生物多様性の一部として理解し、観光資源や教育資源としてその重要性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウイルス感染症パンデミックのため予定していた調査の一部しか実施できなかった。そのため次年度使用額が生じている。今後2022年度から調査を継続的に実施し、予算を執行する予定である。具体的には以下のような調査を実施する。(1) 北アルプス及び大雪山では氷食、隆起、火山活動の痕跡などが生み出した非生物多様性とそれに依存する独自の生態系の接点を明らかにするため、有識者への聞き取り、連続撮影によるビジュアル・データの分析、GISによる空間分析を行う。(2)富士山や屋久島では火山活動や(屋久島の場合)プレート境界の隆起を重要視し、その過程で生み出された非生物多様性と生態系との接点を、有識者への聞き取り、連続撮影によるビジュアル・データの分析、GISによる空間分析を用いて分析する。(3)それぞれの地域での国立公園マネージメントの特徴や課題について聞き取りやアンケート調査から分析する。(4) それぞれの地域の観光当事者の立場や価値観について聞き取りやアンケート調査から調べる。 上記のような調査を実施するため、研究代表者がそれぞれの現場を複数回訪れる必要がある。また一部の現場では分担者とともに共同調査を行う予定である。
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