研究課題/領域番号 |
21K12457
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
井門 隆夫 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (60619138)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小規模宿泊業 / 労働生産性 / 所有と運営の分離 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の小規模宿泊業の価値と、その価値を持続可能とするための新しい資本のあり方のスタンダードを学術的(経営学的)に示すことである。 これまでの小規模宿泊業は、家族経営が中心であった。小さな資本しか持たない家族経営者でも不動産や個人保証をもとに大きな借入ができたことは地域雇用と経済循環を生み出し日本の地方経済の発展を支えたが、その過程でファミリーの資産を増やし個人保証に備えるという「赤字法人と黒字個人で資本のバランスを保つ形態」が標準化した。しかし、統計上は赤字法人の部分しか公にならないため、低い労働生産性が問題視されるようになった。そこで、過剰債務を残したままでの利益率改善では抜本的な解決にはならないという独自の仮説のもと、資本(所有)と運営を分離した経営形態の可能性を提示する。 そのため、抜本的に労働生産性を向上するためには、経営者を個人保証から切り離し、海外で見られるような資本と運営分離形式へとシフトしていくことが望ましい。そうしたスキームにおいて、小規模宿泊業がどのように利益や価値を創出していくべきか、国内外の先行事例の経営者インタビューや参与観察調査で明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度(21年度)では、先行研究調査のほか、国内における先行的な取り組みの視察及びインタビュー調査を行った。 代表事例としては、後継者がなく廃業が予見される温泉地において、代表的企業が中心となりまちづくり会社を組成し、将来に廃業が見込まれる法人をM&Aしていく計画の初期的な動向のリサーチを実施している。また、小規模宿泊業に対する投融資意向に関して、金融機関や投資ファンドにインタビューを行い、主要な課題を把握できた。その上で、実際に自治体から紹介された過疎地の投資案件(所有者は財務的に追加投資が難しい)について新たな資本投下を受ける上での条件や新たなスキームについて仮想提案書を作成している。 可能であれば、海外での小規模宿泊業に投資事例の視察等を実施したかったが、パンデミックの長期化により次年度(22年度)の課題とした。 これらの状況から「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目となる22年度には、海外視察・調査(ベトナム)を実施し、資本と運営を分離することにより観光地ではない過疎地において社会的資本として存在し得る小規模宿泊業のあり方を解明していく。 視察先の事例は、主要な産業である農業及び山間地の棚田保全のため、労働力を地域に維持すべくエコロッジを外部資本により建設し、地域が運営している例だが、日本国内においても今後、宿泊業による「地域の社会課題解決(行政コスト削減)」を目的とした新しい業態の開発が考えられる。そのため、まちづくりで実装され始めたPFS(成果連動型官民連携)/SIB(ソーシャルインパクトボンド)の活用を研究していく。 これにより、人口増加時代に続いた産業のあり方から、人口減少時代の価値を創造する新たな社会的産業としての宿泊業のポジショニングの提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外視察・調査を実施できなかったため。22年度に実施する。
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