研究課題/領域番号 |
21K12464
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
李 昭知 東海大学, 国際文化学部, 特任助教 (30755210)
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研究分担者 |
中嶋 卓雄 東海大学, 理系教育センター, 特任教授 (90237256) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 観光 / コロナ禍 / ブリコラージュ / 学生の意識 / 持続的観光 / Twitter |
研究実績の概要 |
令和2年から2年間に渡るコロナの影響は、観光活動のみならず世界経済活動全般に大きな影響を与えてきた。特に、観光活動が個人のWellbeingに大きく影響し、更に国家の経済活動への影響も大きいことが改めて明確になった。コロナ禍という大きく環境が変化する状況の中で、令和2年から継続的に“観光”をキーワードとしてSNSから情報を抽出し表現の変化を検証してきた。 研究活動において、“観光”をキーワードとしたSNSでの発言を抽出し、その内容を経営学での起業家論や組織心理学に基づく暗黙知および形式知の形成などで注目されているSECI理論により分析してきた。具体的な注目点は以下の3点であり、これらの研究を国際学会で発表するとともに学会誌へ投稿し採録された。 1点目は、継続したコロナ禍において、令和3年からブリコラージュの概念に注目し、大きな環境の変化における人間活動の活性化について定量的に評価した。ブリコラージュは、個人を中心に置き、社会的な困難を克服する手段に注目しており、この活動が観光の分野でどのような活動として繋がるかを分析・抽出した。 2点目は、所属する大学の学生へ「コロナ禍における東海大生の観光意識調査」と題したアンケート調査を実施し、結果を論文としてまとめた。観光は学生にとっても日常生活の身近な習慣であり、多くの学生がコロナ後の観光客の増加を望んでおり、肯定的な感情を示していた。多くの学生は、観光開発がインフラを改善し、観光産業での雇用機会を増やし、文化遺産と自然環境への関心を高めることに賛同しており、持続的な観光へ希望を持っていることがわかった。 3点目は、暗黙知および形式知により困難な状況においても企業組織を強化させる活動を、観光を拡大させる活動に適用させ、その構造を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度において、コロナ禍におけるブリコラージュに注目した研究が、令和4年度において国際的なジャーナルに採録された。この研究では、クロード・レヴィ=ストロースが提案したブリコラージュの活動と、コロナ禍で人間がどのように感情を表現しているかを定量的に評価した。ブリコラージュ的な活動を、タイプ1:自己閉鎖的ブリコラージュ、タイプ2:一方向的ブリコラージュおよびタイプ3:相互的ブリコラージュの3つのタイプに分類し分析した。結果として、特に感染者数の最初の増加ピークに合わせて、タイプ1とタイプ2のキーワードが増加し、タイプ3 のキーワードは増加が連動したなどの結果を得ることができた。このような現象は、大きな環境の変化に対するポジティブな活動と見なすことができ、ブリコラージュの社会的回復力が コロナ禍において人々によって表されていたと言える。 学生に対して「コロナ禍における東海大生の観光意識調査」と題したアンケート調査により、観光における否定的な要因であるオーバーツーリズムなどへの感情を把握することができた。多くの学生は、観光開発が社会インフラを改善し、観光産業の雇用機会を増やし、文化遺産と自然環境への関心を高める結果をもたらしていることに賛同している。更に、オーバーツーリズムの状況を理解し、地域の活動により解決できる可能性があることに同意している。また、イベントで観光客とのふれあいを希望する若者も多く、観光客との体験を共有することに積極的であることが抽出できた。 このように、オーバーツーリズムやコロナ禍のような困難な状況における個人の感情を定量的に評価することができた。しかし、研究計画では、国内外での直接的な研究交流、現地調査を実施することを、当初検討していたが、コロナ禍により移動が規制されたので実施ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
データ解析としては、令和2年から継続的にデータを収集しているが、まだ十分な解析ができてないので、令和3年および令和4年のコロナ禍が回復しつつある時期のデータの解析を実施していきたい。しかし、Twitter社の方針により、令和5年になりデータの取得が厳しくなっているので、今後は、その他のSocial Mediaの情報の取得についても検討していきたい。 今年度では、コロナ後の観光を阻害する要因についてアンケートにより収集していきたい。特に、日本独特のマスク文化の背景についても、学生の実感を習得したい。また、労働力が不足してコロナ後に急速に増加した観光客に対応できない状況が続いており、観光産業での労働や、日本における労働管理対策への感想などを収集する予定である。令和4年度と同様に、学内に設置してある「人を対象とする研究に関する倫理委員会」においてアンケート内容については承認を受けて実施する予定である。 データ解析の方向性として、令和4年はコロナによる活動の制約が継続した最後の年でもあり、コロナ禍による変化を通した観光活動の制約などについても、その文化的な背景なども抽出していきたい。解析手法として、単語の出現頻度とその隣接関係にある単語を抽出するn-gram解析により関連する単語を抽出する手法は確立しているので、新しく機械学習の手法を導入する予定である。今年度は一定のグルーピングした文書に対するトピック分析を実施する予定である。トピック分析として、文書内に含まれるトピックを発見するための確率モデルであるLatent Dirichlet Allocation (LDA)を利用して、コロナ禍およびコロナ後における時期的な変化に対するトピックの変化を抽出する予定である。このように意味構造の関係を広げることにより観光分野における持続性のある活動を具体的に提案することが可能だと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍が継続し現地での学会発表や現地調査が実施できなかったことが大きな要因である。本年度になりコロナの影響も薄れ、国内および国際的に移動の制約が無くなりつつあるので、従来実施する予定であった活動に助成金を使用する予定である。また、国際会議への論文の投稿において、英文校正の費用に助成金を使用し、国際会議での論文の採録に繋げる予定である。自然言語解析用のソフトウェアは、研究代表者が個人で作成中であり、当初予定していた計算機に関係した設備費用については節約することが可能となる予定である。
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