研究課題/領域番号 |
21K12483
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
神谷 大介 琉球大学, 工学部, 准教授 (30363659)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 観光危機管理 / 津波 |
研究実績の概要 |
本研究では,大きく2つの研究を行った.1つ目は,2019年夏季に実施したWi-Fiパケットセンサーのデータを用いた離島周遊観光実態分析である.具体的には,石垣島・竹富島・波照間島・黒島・小浜島・西表島の空港や港といった交通結節点および主要観光施設にパケットセンサーを設置し,そこから取得されるMAC Addressをハッシュ化処理したユニークIDを用いて分析を行った.その際,観光客の特定には,最初もしくは最後に空港で取得され,かつ取得日数が1泊2日から5泊6日までという制約をつけた.この結果,49613個のユニークIDが取得できた.また,空港での取得に,国内線・国際線の制約をつけることにより,ユニークIDに日本人と外国人のフラグを付けることが可能になった. これらのデータを用いた訪問率分析の結果,20%以上の外国人観光客は竹富島を訪問しており,日本人より訪問率が高いことが示された.他の離島においては,日本人観光客の方が訪問率は高くなっている.また,平均滞在時間は西表島と小浜島が長く,竹富島では5時間程度と短いものであった. また,2020年のスマートフォンアプリ位置情報データより,石垣市市街地部における島民と観光客の分布を用い,時間帯別の滞留状況をモデル化した.その際,入域観光客数及び人口をもとに拡大処理を施している.これらをもとに,朝・日中・夜間の3時間断面で津波避難シミュレーションを行った.また,島民による避難声掛け率を変化させてシミュレーションを行った.この結果,一部の地域では島民と観光客が出会わず避難が困難であること,避難ビルの収容人数超過により受け入れ不可となる場合があることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は過去に取得したデータを用いて観光流動推計が可能であるか否かの評価を行った.この結果,アンケート調査などと同様の傾向が示され,十分適用可能であることが分かった.さらに,本調査の方が取得サンプル数は格段に多く,適用可能性が広いことも示された.また,避難行動シミュレーションについては,マルチエージェント型のシミュレーションモデルを構築し,パラメータを変更することにより,様々なパターンでの計算が可能な状況を作っている. 一方,コロナ禍による影響の結果,離島訪問自粛が呼びかけられたりするなど,ヒアリングなどは十分に行えていない.このため,今年度は現地での避難経路の安全性確認を行うため,電柱や通信柱の分布状況まで把握を行った. 以上より,コロナの感染状況により当初予定とは変更を行っているが,一部の調査を前倒しで実施するなどの対応を行い,3年間の研究としては予定通り実施できていると考えている.電柱・通信柱については,全国的に無電柱化が進められている一方で,防災の観点からの評価方法が確立されていない.このことに鑑み,避難シミュレーション結果の新たな価値を見出すこともできていると考えられる.この点においては,当初計画よりも研究の幅が広がったといえる.
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今後の研究の推進方策 |
まずは避難経路の利用人数と電柱・通信柱の関係より,避難経路の安全性評価を行う.これにより,津波避難経路としての重要性評価および避難における課題を明らかにする.また,各時間帯における避難不可能者の分布を考慮し,避難経路の路面標示などを行うことの効果計測もシミュレーションを通して明らかにする. コロナの感染状況にもよるが,ヒアリングなどが実施できる状況になれば,観光事業者が観光危機管理(避難誘導)にかかわるインセンティブなどを調査する予定である.今年度は沖縄県観光危機管理計画の改定を協力した結果,これまでよりも多くの方々とのつながりが形成された.次年度においては,これらの関係を活用しながらさらに研究を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の関係より,学生(研究補助者)を連れての調査回数が減少したため,残額が発生した.感染状況を踏まえつつ,次年度,適切に調査を行う予定である.
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