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2022 年度 実施状況報告書

ユニバーサルツーリズムの環境整備に向けた統一規格の策定に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K12491
研究機関富山国際大学

研究代表者

一井 崇  富山国際大学, 現代社会学部, 准教授 (00844599)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード五感の観光 / ユニバーサルツーリズムの再定義 / 五感を活用した新たな旅のスタイル
研究実績の概要

【研究課題Ⅰ:「実践的な課題へのアプローチ」】については、これまでのUTに関する課題整理を踏まえ、調査対象を視覚に障害のある当事者に絞った。その理由としては、視覚は認知情報の約8~9割を占めると言われており、観光分野においてUT対象者の中でもより多くの課題や困難性を伴うことが推察されるためである。
この視覚に障害のある旅行者のニーズや観光に際しての困難性を把握し、課題解決の方策を導出する手がかりとして「五感の観光」をテーマにフィールドワークを実施した。従来の観光では「見える」(視覚)が前提となっているが、視覚を含む「五感」を活かすことで視覚障害者がだけでなく全ての旅行者がより主体的に旅を楽しむことが可能となる。さらに、「五感の観光」を通じ、障害の有無や年齢、言語や文化の差異を知り、あるいは差異を超えて多くの旅行者が旅の経験を共有することが新たな気づきにつながり、旅行者同士の相互理解を醸成する本来のユニバーサル(Universal:普遍的)な観光が実現可能となると考えるからである。また、五感をつかって楽しむことを前提とすることで自然資源、文化資源をより多面的に活用することが可能となり、新たな観光スタイルを創造する契機となることが期待される。同フィールドワークを通じ、観光地独自の自然環境や地域文化を活かした観光地形成の新展開への手掛かりを実証できつつある。
【研究課題Ⅱ:「概念的な課題へのアプローチ」】については、ユニバーサルツーリズムが障害者や高齢者などを観光弱者として対象化するにとどまっており、当事者理解の醸成につながっていないことが課題として導出された。この課題を踏まえ、現在、実践的なアプローチを通じ、ユニバーサルツーリズムの定義に関する概念的な整理を継続的に行っており、研究計画後半の2年間はこれらの研究成果を整理する段階と位置付けている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画に比べ、特に【研究課題Ⅱ】にかかわる実態調査(国内、海外)がやや遅れている。その要因は、コロナ禍において国内、海外調査が実施できなかったことにあるが、コロナ禍が収束に向かいつつあることを踏まえ、2023年度からの研究計画後半2年間において国内調査①(北海道・浦河町)、海外調査①(イタリア・ボローニャ)、②(デンマーク・コペンハーゲン)を実施する予定である。
申請書の年次計画にある学会発表②については、ユニバーサルツーリズムの諸課題を踏まえ、2022年度に実施した富山県におけるフィールドワークの結果と考察に関する発表を日本観光学会(2022年11月、於東京農業大学)で行った。また、それらの知見を観光事業者らと共有するため、フィールドワークの成果発表会を東京(2023年2月)と富山(2023年3月)にてフィールドワークの協力者である申請者のゼミ所属学生らと共に行い、その様子は地元紙でも取り上げられ、広く周知された(研究成果の備考欄参照)。さらに、全ての展示物がさわることのできるユニバーサルミュージアムの先進事例としてヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡県三島)を視察し、概念的な課題へのアプローチを行った。その成果については、次年度2023年6月に実施される同美術館でのシンポジウムで来場者と共有する予定である。

今後の研究の推進方策

現在の進捗状況を踏まえ、研究計画3年目に当たる2023年度は以下の計画に基づき、実施する予定である。
【研究課題Ⅰ】については、3年目のテーマであるUTの実践と効果の検証に対し、これまでのフィールドワークの研究成果を踏まえ、視覚障害者を対象とするモニターツアーを年度内に実施し、参加者を交えた議論の場を設け、当事者ニーズの把握とUTの統一規格策定に向けた知見を導出する。
【研究課題Ⅱ】の海外調査①②については、次年度のコロナ禍の状況が見通せないことを踏まえ、本研究後も継続的かつ長期的な視点で調査を進めるための基礎調査と位置付け、コロナ禍後の調査先の実態把握を中心に実施する予定である。論文投稿①②については、調査の進捗状況を踏まえ、4年目の2024年度に日本観光学会への投稿および研究テーマに関連する著書(共著)出版を予定している。

次年度使用額が生じた理由

当初の研究計画では、【研究課題Ⅱ:概念的な課題へのアプローチ】として、2022年9月にイタリアでの調査、2023年3月に北海道での調査を実施する予定であったが、コロナ禍における調査対象の受け入れ環境を鑑み、調査を2023年度以降に延期した。
一方、概念的な整理を行うための1次文献資料調査や首都圏での視覚障害に関わるバリアフリー調査(視覚障がい者ナビゲーションシステム「shikAI」の現地調査および開発担当者へのインタビュー)や視覚障害者支援に携わる実践者へのインタビュー(国内初のユニバーサルシアタ-「CINEMA Chupuki TABATA」運営代表者など)、視覚について考える体験型イベントへの参加(東京・竹芝:ダイアログ・イン・ザ・ダーク、京都:京都国立近代美術館主催イベント「CONNECT(コネクト)」(※障害のある方もない方も共に考え、語り合い、実践するプロジェクト)などを実施し、次年度以降に向け、当初予定していた国内、海外調査以外の調査研究を通じ、概念的な整理を行っている。

備考

「五感で感じる観光」をテーマに実施したフィールドワークとその諸成果を観光事業者や行政関係者らと共有し、ユニバーサルツーリズムの新たな可能性について考える機会となった。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (3件)

  • [学会発表] ユニバーサルツーリズムに関する一考察-「五感で感じる観光」をテーマとする着地型観光商品造成のためのフィールドワークより-2022

    • 著者名/発表者名
      一井崇
    • 学会等名
      日本観光学会・第115回全国大会
  • [備考] 立山町において「五感で感じる観光」をテーマに亜細亜大学と合同フィールドワークを実施

    • URL

      https://www.tuins.ac.jp/2022/09/9453/

  • [備考] 渋谷QWSにてフィールドワークの成果発表会『Z世代が考える五感の観光in TATEYAMA』を開催

    • URL

      https://www.tuins.ac.jp/2023/02/10780/

  • [備考] 富山県民会館にてフィールドワークの活動報告会「五感の観光in TATEYAMA」を開催

    • URL

      https://www.tuins.ac.jp/2023/03/11034/

URL: 

公開日: 2023-12-25   更新日: 2024-11-13  

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