本研究は「観光経験の哲学的分析及びその観光倫理教育への活用手法に関する基礎的研究」と題し、「観光者の観光経験の哲学的理解をいかに深めることができるか、また、その成果をいかに適切に観光倫理教育に導入することができるか」という問題を解明するものである。 研究1年目は、観光における人間の「想像力」に関し、「観光経験における<想像力>の役割に関する哲学的考察―包括的探究に向けた論点の整理―」と題し口頭発表を行った。また、観光における人間の「知覚」や「感情」に関し、「モビリティ・ジャスティスとスローツーリズム-日本における現状把握と展望」と題したシンポジウム発表を行った。加えて、「観光倫理への倫理学諸理論の導入―現状と課題」と題した口頭発表を行った。 研究2年目は、1年目の成果を踏まえ、論文「観光倫理研究の現状と課題―英語圏の先行研究と自然・人間・社会の複雑さを踏まえて」を発表した。この論文では、観光開発の現場での倫理学理論の活用、倫理的コード、観光者の倫理、観光教育の枠組みにおける倫理の位置という4テーマにつき、現状と課題を包括的に分析した。更に、論文「スローツーリズムに関する基礎的研究―スロー運動との関係性および定義・現状・展望―」を発表した。 研究3年目は、観光経験の哲学的理解をいかに観光倫理教育に導入するかという問題に関し、「<善き生の探究としての観光哲学>の教育内容に関する考察―J.トライブの理論を踏まえて―」と題し口頭発表を行った。本発表を通し、諸事象の「根拠や理由」・「過程やあり方」・「意味や価値」・「課題や可能性」の4つの観点から、自己と観光との関わりについて多分野の知見を活用し哲学的に反省を深めることの重要性が明らかになった。
|