研究課題/領域番号 |
21K12496
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
太田 健二 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (60506997)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ポストコロナ / ライブエンターテインメント / ナイトタイムエコノミー / ミュージックべニュー / コモンズ |
研究実績の概要 |
2023年5月8日、新型コロナ(covid-19)が5類へと引き下げられたことで、同年の訪日客旅行消費額は5兆2923億円で過去最高、訪日客数は2506万人でコロナ禍前の2019年の8割まで回復した。このようななかでミュージック・べニューをめぐる環境も大きく変わった。 本研究課題では、ローレンス・レッシグが『CODE』などで指摘した法・市場・規範・アーキテクチャという四つの規制のモードから分析している。まず、人数制限やさまざまな感染防止対策を講じる必要など、法による規制が解除されることになった。それに伴い、コロナ禍において醸成された「ニュー・ノーマル」といった生活様式の規範も希薄となった。フィールドワークからも、ミュージック・べニューのオーディエンスのマスク着用率は急速に低下し、声援や密になるようなダンスも、ほぼコロナ前の状況に戻った様子が確認できた。それは同時にアーキテクチャの変化でもある。感染防止対策のため、オーディエンスや客席同士の一定のディスタンスを取るような設備(たとえば、パーティションなど)は、もはや無用の長物となっている。 市場というモードでは、ぴあ総研『2023ライブ・エンタテインメント白書』によれば、コロナ禍前に戻りつつあるように見える。しかしながら、ミュージック・べニューの規模や立地する地域によって、状況は異なる。いわば、市場というモードにおいて、コロナ禍前に戻りつつあるべニューと、そうでないべニューとに分極化していると言える。それは、先に触れた規範のモードと関わっており、感染等のリスクやライブに対する価値観などに関して、さまざまな分断を生んでいると考えられる。とりわけ中小のミュージック・べニューに対するインタビュー調査からも、このような現状が浮き彫りとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題では、中小ミュージックベニューへのフィールドワークを進めているが、新型コロナ(covid-19)が5類へと引き下げられて以降、急速に回復したところも多く、当初、想定していたほど、スノーボールサンプリング式で調査に協力していただける対象をなかなか広げていくことができなかった。 また、地理情報システム(GIS)を活用した分析の方は、想定していたたメッシュ型インバウンドデータが、X(旧Twitter )の仕様変更に伴い、2020年4月以降のデータが取得できなくなったことなど、計画よりも進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
フィールドワークについては、イベント主催者や出演ミュージシャンへのインタビュー調査などに拡大している。 地理情報システム(GIS)を活用した分析の方は、想定していたデータの代替となるデータを活用しつつ、ミュージックベニューに関する地理情報を整理することに努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍前後の変化を比較するために購入を予定していたたメッシュ型インバウンドデータが、X(旧Twitter )の仕様変更に伴い、2020年4月以降のデータが取得できなくなったことが主たる理由である。
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