研究課題/領域番号 |
21K12526
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
岡安 悟 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50354824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 中性子 / 熱電素子 |
研究実績の概要 |
スピン熱電素子の耐放射線特性を研究している中で重イオン線、ガンマ線、電子線といったものを実施してきたが、原子炉が稼働していなかったため、中性子に対するものは未実施であった。原子力科学研究所の3号原子炉(JRR-3)が震災後ようやく再稼働したことでスピン熱電素子の中性子照射実験が可能となった。照射は3号原子炉の炉心近傍に圧空または圧水を用いて試料を移送し、中性子環境にさらす。所定の照射量になるまでその場に試料を止めて照射を行った後、再び圧空または圧水によって試料を炉心から取り出す。中性子環境にさらされることで試料は放射化するのでこれまでの実験環境では特性評価測定ができない。そのため、新たに管理区域内に測定系を移設して特性評価実験を行った。中性子線量を5x10^15,1x10^17,1x10^18(n/cm2)とし(照射時間がそれぞれ2分、18分、180分に相当)、照射による素子の特性変化(磁化、及びスピン熱電信号など)を照射の前後で測定し、照射によってそれぞれの物理量がどのように変化するかを系統的に調べた。その結果、スピン熱電信号の生成に大きく寄与する磁化に大きな変化は見られなかったが、スピン熱電信号そのものは1x10^18(n/cm2)の照射量で2割ほどの減少が観測された。磁化に大きな変化が無かったのでスピン流を生成する過程に大きな変化はないと考えられる。そのためスピン流を金属層に注入する過程、またはスピン流を電圧に変換する過程に何らかの阻害要因が生じたと考えられるが、詳細は今のところ不明である。現在、再度の照射実験も含め、結果の考察を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はスピン熱電素子の中性子照射特性を調べることを到達目標に設定していた。照射量を1x10^16,1x1o^17,1x10^18と増やしてスピン熱電素子の特性変化を系統的に追いかけ、スピン熱電素子には中性子に対する耐性がありそうだというところまでは確認できた。特性変化では中性子照射で若干の劣化が見られるが、これは素子と中性子吸収の大きな物質とを組み合わせることで劣化を抑えることが可能であると考えられる。この結果を踏まえ、J-PARC,JRR-3での中性子検出実験に臨んだが、残念ながらマシンタイム申請が通らなかった。実際の検出実験は最終年度に持ち越しとなってしまったため、検出実験に用いる交流磁場を用いた検出法の確立に従事し、大凡の達成を見た。また検出に用いる素子について、当初のPt/YIG二層膜以外の候補として、Ni/CdSを作製し、その特性評価を行った。以上のとおり、当初計画どおりに進捗しているため、おおむね順調に進展している。と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
スピン熱電素子と中性子吸収剤としての硼素を組み合わせた中性子フラックス計の試作を行う。現在基板として用いているガドリニウム・ガリウム・ガーネット(GGG)中のガドリニウムが中性子と反応して素子の劣化の要因となっているようなので、ガドリニウムを排除した試料作製ができないかの検討を行った結果、新たにNi/CdSを用いた試料を作製し、特性評価行ったので、これを用いた実験を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
寒剤として使用している液体ヘリウムとヘリウムガスが高騰し、計画当初の価格で購入が難しくなった。また購入可能な数量も逼迫し、当初の計画通りに購入ができなかったため、使用額に差異が生じた。余剰分は次年度に購入できるタイミングですぐに購入できるよう、準備しておくことで適切な使用に努める。
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