| 研究課題/領域番号 |
21K12531
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| 研究機関 | 公益財団法人佐賀県産業振興機構(佐賀県産業イノベーションセンター産業振興部研究開発振興課、九州シンク |
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研究代表者 |
高林 雄一 公益財団法人佐賀県産業振興機構(佐賀県産業イノベーションセンター産業振興部研究開発振興課、九州シンク, 加速器グループ, 副主任研究員 (50450953)
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| 研究分担者 |
隅谷 和嗣 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 研究員 (10416381)
馬込 栄輔 公益財団法人佐賀県産業振興機構(佐賀県産業イノベーションセンター産業振興部研究開発振興課、九州シンク, ビームライングループ, 副主任研究員 (40408696)
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| 研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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| キーワード | 遷移放射 / 軌道角運動量 |
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| 研究実績の概要 |
1990年代初頭に，らせん状の波面を持つ電磁波が軌道角運動量を運ぶことが理論的に示されて以来，可視域においてレーザーを用い，軌道角運動量を運ぶ光に関する研究が精力的に行われてきた．その後，真空紫外線・X線などの短波長領域，テラヘルツ波・ミリ波など長波長領域にも研究が広がっている．また，その特殊な性質（トルク，ドーナツ状の角度分布等）が注目され，ナノテクノロジー分野，イメージング分野，通信分野等，幅広い分野で応用研究も進められている．
また，円偏光アンジュレータ，レーザーコンプトン散乱，チャネリング放射等，高エネルギーの電子ビームを利用して，軌道角運動量を運ぶ光を生成する研究も近年行われるようになってきている．これらの手法では，電子が螺旋運動することが重要な役割を果たしている．一方，光の波長がビームサイズよりも十分小さい場合に，遷移放射やチェレンコフ放射が軌道角運動量を運ぶことが最近，理論的に示された．これは，電子が螺旋運動をしなくても軌道角運動量を運ぶ光が生成されることを示しており，今までの発生原理とは異なるユニークな手法である．そこで，本研究では，この理論の実験的検証を目的とする．
実験は，九州シンクロトロン光研究センターの255 MeVリニアックからの電子ビームを利用して行う．典型的なビームサイズは0.1 mmから1 mm程度であり，上記の条件を満たす光はテラヘルツの領域に該当する．遷移放射は電子ビームを鏡面加工されたシリコン結晶に入射させて発生させる．シリコン結晶はビームに対して45度傾け，90度方向に生成された遷移放射をビューポートを通して大気中へと取り出す．すでに，遷移放射の軌道角運動量を測定するために必要な光学素子とテラヘルツ検出器の準備・立ち上げ調整を終えており，ビームタイムが取れ次第，実験を開始する予定である．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に，実験装置の設計・立ち上げ調整を行った．
(1)標的として，厚さ20ミクロンのシリコン結晶を用意した．遷移放射の生成効率を高めるため，鏡面加工されたシリコン結晶を用いる．九州シンクロトロン光研究センターのリニアックの延長線上に設置された真空チェンバー内にある2軸回転ゴニオメーターにシリコン結晶をインストールした．シリコン結晶はビームに対して45度傾け，90度方向に生成された遷移放射をビューポートを通して大気中へと取り出す予定である．
(2)大気中へと取り出された遷移放射は，バンドパスフィルターにより特定の波長が選択され，さらに偏光板，1/4波長板を通して，特定の偏光状態が選択されるようになっている．その後，正3角形状アパーチャーによって回折され，その回折パターンの形状から軌道角運動量が決定される．回折素子として，ダブルスリットなど様々な素子が使用されているが，本研究では回折パターンが比較的容易に確認できる正3角形状アパーチャーを採用することにした．すでに，各光学素子，光学素子用ホルダーの準備を終えている．
(3)テラヘルツ検出器として，焦電タイプのものを採用した．検出器を水平方向と鉛直方向に移動できる2軸ステージに設置し，検出器の位置をスキャンすることにより，回折パターンを測定する予定である．本年度は，テラヘルツ検出器と2軸ステージの購入・立ち上げ調整を行った．
実験を行うまでには至らなかったが，上述したように予定通り，実験装置の準備・立ち上げ調整は進んでおり，おおむね順調に進展していると考えられる．
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| 今後の研究の推進方策 |
上述したように，遷移放射を生成させる標的，遷移放射の軌道角運動量を測定する際に必要となる光学素子と検出器の準備をすでに終えている．また，テラヘルツ検出器の位置を2次元的にスキャンしながら，テラヘルツ検出器からの信号をデジタル的に取得するプログラムを開発中である．プログラムの開発が終了し，ビームタイムが得られ次第，実験を開始する予定である．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
実験条件を考慮し，テラヘルツ検出器を慎重に選別した結果，予定よりも安価な価格で購入することができたため次年度使用額が生じた．今後，光学素子の位置を精密に調整するためのホルダー等の購入に充てる予定である．
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