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2022 年度 実施状況報告書

中性子その場観察による水素貯蔵材料内の残留水素の挙動と拡散経路の可視化

研究課題

研究課題/領域番号 21K12534
研究機関茨城大学

研究代表者

岩瀬 謙二  茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (00524159)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード中性子回折 / 重水素化物 / Rietveld解析 / PDF解析
研究実績の概要

2022年度にbcc固溶体合金の重水素化物中性回折データを用いてRietveld解析およびPDF解析を実施した。Ti45Cr25Mo30D150, Ti45Cr25Mo30D70, Ti50Cr20Mo30D160, Ti50Cr20Mo30D70の結晶構造および局所構造を精密化した。水素吸蔵前のbcc構造から、最大吸蔵時にCaF2-type構造に構造変化することを捉えた。水素が残留した相では、bcc構造を有することが分かった。Ti45Cr25Mo30D150とTi50Cr20Mo30D160内の重水素は、CaF2-type構造内のTサイトを占有し、占有率は75~89%に達した。単位格子は、水素吸蔵前と比較して39%程度等方的に膨張していることが得られた。水素が残留したTi45Cr25Mo30D70やTi50Cr20Mo30D70では、残留水素はいずれもTサイトを占有することが分かった。Ti45Cr25Mo30D70に関して、Tサイトをスプリットしたサイトモデルを用いて解析した結果、一番良い解析フィットを示したことから、水素がTサイトの中央からずれた位置を占有していることが推察された。
PDF解析の結果から、Ti45Cr25Mo30D150とTi50Cr20Mo30D160内の重水素の周辺金属の配位数を調べた。Ti,Cr,Moの配位数は、試料の組成比の割合とほぼ等しいことが分かった。Ti45Cr25Mo30D70やTi50Cr20Mo30D70内の残留水素の周辺金属の配位数について、Tiの平均配位数は2以上を示し、Tiが2個以上含まれる四面体サイトを占有していることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Rietveld解析による水素の占有位置、PDF解析による残留水素周辺の金属原子の配位数を定量化することができた。
前年度に測定したbcc固溶体合金(水素が残留する試料)との比較を行うため、2022年度には、追加実験として水素が残留しない合金試料の測定を検討していた。電気代の高騰により、大型実験施設の運転日数が削減されたため、水素が残留しない合金試料の測定が実施できなかった。

今後の研究の推進方策

2023年度には、Ti-Cr-Mo系合金のMEM解析を実施する。MEM法を用いて、重水素物相(Ti45Cr25Mo30D160, Ti45Cr25Mo30D70, Ti50Cr20Mo30D160, Ti50Cr20Mo30D70)内の重水素の核密度分布を可視化する。核密度分布の変化から、水素の拡散経路や残留水素が形成される過程を明らかにする。MEM解析の際に、2021年度・2022年度に実施してきたRietveld解析、PDF解析の結果を導入し、より精度の高い拡散経路の可視化に臨む。
2022年度に追加実験として検討していた水素が残留しない合金系(希土類‐Co系金属間化合物)の重水素化物の中性子回折実験を実施する。Ti-Cr-Mo系と同様にMEM解析まで実施、水素の拡散経路を可視化する。
水素が残留しない合金系と水素が残留する合金系の結果を比較し、精密な拡散経路および水素拡散を律速する構造学的因子を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

追加の中性子回折実験を検討していたが、大型施設の電気代高騰による運転日数の削減により、実験を実施できなかった。重水素化物を準備作成するための費用が必要でなくなったため、次年度への繰り越しとなった。繰り越し後は、消耗品の購入に充てる予定である。特に、希土類金属や重水素ガスなど物価上昇が顕著であり購入費用の増加が見込まれる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Crystal structure of deuteride phase of Nd-Ni alloy by X-ray and neutron diffraction2022

    • 著者名/発表者名
      Kenji Iwase, Shuhei Ishida, Takashi Ueno, Kazuhiro Mori
    • 雑誌名

      Journal of Alloys and Compounds

      巻: 924 ページ: 166557

    • DOI

      10.1016/j.jallcom.2022.166557

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phase transformation of hydride-phase Nd2Co7 with superlattice structure2022

    • 著者名/発表者名
      Kenji Iwase, Yugo Honjyo, Kazuhiro Mori
    • 雑誌名

      Journal of Solid State Chemistry

      巻: 316 ページ: 123575

    • DOI

      10.1016/j.jssc.2022.123575

    • 査読あり
  • [学会発表] Mn置換が水素吸蔵放出特性に与える影響及びYNi3-xMnxの結晶構造2023

    • 著者名/発表者名
      國本怜遠, 山崎陸渡, 岩瀬謙二
    • 学会等名
      日本金属学会春期講演大会

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公開日: 2023-12-25  

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