研究実績の概要 |
bcc固溶体合金の重水素化物中性回折データを用いMEM(Maximum Entropy Method)解析を用いて、水素の拡散経路の可視化を試みた。水素の吸蔵と共にbcc固溶体合金がCaF2-type構造に変化する。bcc構造のTサイトからCaF2-type構造のTサイトへ水素の占有位置が変化する。変化の際に、水素の拡散経路も変化していく事がMEM解析の結果から得られた。TiとTiの間の拡散経路を経由していく事も分かった。水素化物相内のTiの位置・分布が水素の拡散と密接に関連していることが明らかとなった。 研究期間全体を通じて水素吸蔵に伴う結晶構造変化がRietveld解析結果から明となった。格子定数や占有サイト・占有率の定量化によって、構造変化中の格子ひずみ量も求める事ができた。格子歪量の違いからCaF2-type構造へ構造変化することが分かった。 固溶体合金のRietveld解析では、Ti,Cr,Moの平均した仮想原子Mを設定して解析を実施する。そのため、占有水素の周りにどのような金属原子が分布・配置しているのかが分からない。PDF解析によって、水素化物相内のTi,Cr,Mo,Dの分布を明らかにすることができた。水素は、Ti濃度が高いTサイト内を占有することが分かった。 MEM解析によって水素の拡散経路が可視化され、TiとTi間の経路を拡散し構造変化を誘発していることが得られた。中性子回折実験を実施することによって、直接水素の静的・動的挙動を明らかにした。Rietveld解析、PDF解析、MEM解析を組み合わせる事によって、吸蔵された水素がどのような経路拡散し、合金内に残留するのかを定量化・可視化することができた。
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