研究課題/領域番号 |
21K12535
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬戸 誠 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (40243109)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コヒーレントγ線 / 偏光制御 / メスバウアー効果 |
研究実績の概要 |
本研究では、原子核への外部磁場およびオングストロームオーダー高精度位置制御などにより偏光および位相を制御した単一ガンマ線光子を生成し、その生成されたガンマ線光子に対して偏光状態および位相の変更を実現することを目的としている。そしてガンマ線の相関状態を測定するために、散乱ガンマ線のエネルギー・時間および外部摂動の信号全てを記録可能な先進的な計測系の開発を実施するものである。 メスバウアー効果を用いた無反跳γ線として最もよく用いられているのはCo-57線源からのγ線で、Fe-57メスバウアー分光測定に用いられているが、一般に物性研究のためには磁気分裂のないシングルラインの線源が用いられている。しかしながら、その場合には偏光したγ線を直接利用することができない。一方、偏光したγ線はファラデー回転などにより偏光面を回転させることが可能となることから量子情報・光学などといった分野で有効に利用することが可能となる。メスバウアー分光法においても偏光したγ線を利用するで、磁性体の内部磁場方向や単結晶における電場勾配主軸方向の同定などといった研究が可能となる。本研究では、このような偏光γ線生成のために、磁気分裂したγ線源の作製を行った。さらに、パルス波形制御実施のために必要となる原子核のカスケード崩壊を利用した相関γ線の時間スペクトル測定法を確立するために、時間‐エネルギー同時測定を可能とする測定系の開発研究も行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで磁気分裂させたγ線源はCo-57を磁性体である鉄中に拡散させるなどして行う事が多かったが、比較的容易に磁気分裂線源が作製可能な方法として、Niフォイル中のNi-58(存在比 68%)の電子線照射によりCo-57の生成を行うことができた。この線源の鉄原子核位置での内部磁場はシングルラインのステンレス吸収体を用いたメスバウアー分光測定により26.7 Tとなることが確認された。一般に形状異方性により磁性体フォイルは外部磁場により容易に面内配向をすることが知られているが、特にFeフォイルについてはメスバウアー分光により外部磁場により容易に配向が制御できることが確認されている。我々はCo線源となるNiフォイルに外部磁場を印加することで偏光γ線を取り出すことが可能であることを確認することができた。 さらに、第1励起状態からのγ線(γ14.4)は第2励起状態からの遷移の際に放射されるγ線(γ122)と相関している。そこで、我々はこのような相関したγ線の計測とメスバウアースペクトルの同時計測を可能とするMCS測定の開発研究を行なった。この測定系では2つ(以上)のγ線を100 ps時間分解能で記録することができるが、これらをリストモードで記録することで、予め相関時間幅を設定するのではなく、測定後に相関時間を選択することが可能であるという自由度を持っているものである。
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今後の研究の推進方策 |
開発を行った偏光γ線源を用いたメスバウアースペクトル測定をすすめ、外部磁場等による偏光制御を実現する。また、この線源および開発した測定系を用いて、時間-エネルギー同時測定が実現可能であることを検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナなどの状況により線源生成のための照射スケジュールなどの実験環境等に予定変更が生じたため。
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