研究課題/領域番号 |
21K12536
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
入澤 明典 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (90362756)
|
研究分担者 |
東谷 篤志 摂南大学, 理工学部, 准教授 (70415272)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | テラヘルツ / 自由電子レーザー / 遠赤外線 / 半導体 / 赤外分光 / 光電子分光 |
研究実績の概要 |
本年度は、半導体素材を中心に自由電子レーザー(THz-FEL)を照射することによって新たな状態の固体材料を創成し、これまでに無い物性と機能性を持たせることを目的とし、試料準備と物性評価実験を行った。これまで半導体SiウエハにTHz-FELを照射した際に波長以下の微細構造(LIPSS)が非熱的プロセスを伴って生成し、その波長依存性やエネルギー依存性などを明らかにしている。その生成プロセスは未だ解明されていないが、処理後では安定している表面形状や、アブレーションに伴ったであろう微粒子の発生などからなんらかの物性変化も期待される。しかし、LIPSSは基本的にFEL集光点で生成する構造であることから、分析手法は顕微分光など微小領域計測に限られていた。本研究では試料準備に従来の固定位置で必要パルス数FEL照射を行う定点照射による試料作成ではなく、ラスタスキャンしながら照射することにより大面積の試料(2D-LIPSS)の作成を行った。照射数にも依存するが、15-30分程度で5mm*5mmの領域に連続したLIPSSを形成できた。予備実験としてラマン分光を行ったが、LIPSS形成部においてアモルファス化など結晶構造の大きな乱れは観測されなかった。また、光電子分光装置による電子状態の観察を行った。表面、バルクの分離など課題があり暫定的ではあるが、照射による物質の電子状態変化があるように思われる。赤外分光に関しては、実験室装置を作成するとともに放射光施設での赤外ビームラインを活用して、次年度以降本格的な解析実験を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定試料作成は順調に当面の必要量を作成済みである。電気抵抗などある程度試料の大きさの必要な基礎物性測定も可能となった。一時、所属機関の移動のため実験を中断する必要があったが、分担者らの協力により最短の時間で実験再開にこぎ着けている。実験室での赤外顕微分光装置はコロナ下と急激な物価上昇に伴い、予定していた製品の納期および価格が変動したため遅延しているが、所属移動先で放射光を用いた顕微分光装置があり、必要波長域をカバーできる予定である。また、移動先の放射光施設で新たに利用可能となった光電子分光装置、赤外分光装置、XAFSなども電子状態解明の分析手法として今後活用していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
物性計測に必要な試料は学外から施設利用を申請し、今後も継続的に作成する予定である。赤外分光測定に関しては海外製品を導入予定としていたため今後の日本経済の動向に左右されるが、実験室、放射光施設両方を活用して必要波長域を上手く組み合わせながら実験を行う予定であり、実現可能である。移動先の放射光施設で新たに光電子分光装置、赤外分光装置、XAFSなども担当することになったため、これらの装置を利用して表面、バルクの電子状態解明に活用する。光電子分光装置はテンダーX線、ハードX線両線源を保有し、2次元マッピングにも対応しているため、表面とバルクの電子状態の違いを調べることが出来る。LIPSSの形成部に関して深さ方向の状態の違いを直接調べる事を新たに計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外製品購入予定であったため、コロナ下での納期未定および急激な円安状況下で計画が変更となった。しかし、所属先変更に伴う実験設備の変更により、計画予定での実験は実行可能である。そこで新たに必要となる光学部品や装置を購入し、当初の実験計画を遂行する予定である。
|