研究課題/領域番号 |
21K12538
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
有馬 秀彦 九州大学, 工学研究院, 助教 (20253495)
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研究分担者 |
森 義治 京都大学, 複合原子力科学研究所, 特任教授 (30124176)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 垂直軌道変位固定磁場加速器 / 集束系電磁石 |
研究実績の概要 |
将来の大強度・高エネルギー加速器の候補の一つとして現在検討中の新方式円形加速器では、加速に伴い周回ビーム軌道が垂直方向に変位する「垂直軌道変位固 定磁場加速器(VFFA)」の実用化が不可欠である。しかしながら、未だVFFAの原理検証機の開発例はない。そのため、垂直方向に特殊な磁場分布を有する電磁石から構成されるビーム集束系を設計開発し、VFFAを利用した新方式加速器実現のための諸データ取得を目指す。 本研究課題では、VFFA原理検証機として直径約2mの数十keV電子モデルを想定しており、未だ開発例のないVFFA原理検証機の実現に向け、VFFA集束系電磁石の設計開発および性能評価等を主な研究目的とした。 昨年度から引き続き、VFFA原理検証機用集束系電磁石の設計製作を行った。特殊な磁場分布生成に採用したVFFA電磁石用多段コイルについては、コイル製作時の寸法均一度の向上、製作期間の短縮化のため、専用の製作治具を新たに開発して製作した。VFFA用電磁石で構成されるビーム集束系に対応した、断面が矩形状の真空槽を新たに設計製作し、真空排気試験を実施した。ビーム集束系試験装置の一部として、精密据付のための電磁石固定架台等の設計製作を行った。構成したビーム集束系の性能を評価するための磁場分布測定装置については、現有の3次元磁場分布測定装置を本研究課題の磁場測定に対応させるため、装置の一部改造を行い、装置の動作試験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
垂直軌道変位固定磁場加速器(VFFA)ではビーム軌道が加速に伴い垂直方向に移動していくVFFA特有の仕様を満たすために、集束系を構成する電磁石はビーム軸に 垂直な方向に対して指数関数的に変化する特殊な磁場分布を有する必要がある。将来のVFFA実現に向け、開発中のVFFA原理検証機に不可欠な特殊な磁場分布を有 する電磁石の設計開発指針を得ることを本研究課題の目的としている。本研究課題では、開発するVFFA集束系電磁石に多重コイルを使用して要求される磁場分布を構成する方式を採用している。世界的コロナウィルス感染拡大に関連した物資供給不足のため、昨年度に予定していた電磁石用電源や真空槽、その他一部の物品の納期等が本年度にずれ込んだが、真空槽の排気試験、磁場測定装置の改造および動作試験などのVFFA集束系性能試験の準備状況、当初予定していた今年度の研究計画について概ね進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
VFFA原理検証機において使用される特殊な磁場分布を有する電磁石から構成される集束系の検証を行う。数セルの電磁石から構成されるVFFA集束系の試験装置を設置する。現有の磁場測定装置を使用して、種々の条件での磁石内および磁石間の磁場分布を測定する。測定で得た磁場分布を3次元磁場計算コードにより求めた磁場分布と比較し、VFFA試験装置でのビーム輸送実験における集束系電磁石の運転条件を求める。本装置に電子ビームを入射するための電子源及びビーム入射系を接続し、ビーム輸送を実験的に確認する。電子ビームの入射エネルギーを変化させ、加速に伴い垂直方向に移動するVFFA特有のビーム軌道の変位を模擬的に確認する実験も行い、VFFA原理検証機実証のための種々の有用な指針を得る。本研究で得た成果により、将来の核変換処理やミュオン加速器実用化のための大強度高エネルギー加速器の展望につ いても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大に関連した物資供給不足のため、予定していた電源その他一部の物品の納期等について若干の遅れが生じたため、当該予算の一部を次年度に使用することになった。なお、次年度は最終年度であるため、計画的に当該予算を使用する予定である。
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