研究課題/領域番号 |
21K12547
|
研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
西村 亮彦 国士舘大学, 理工学部, 准教授 (30749601)
|
研究分担者 |
山口 敬太 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80565531)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 道路空間再編 / 公共空間 / トータルデザイン / マネジメント / 社会実験 / シェアドスペース / スーパーブロック / パークレット |
研究実績の概要 |
2022年度は、①欧州・米州各国の道路空間再編・利用におけるデザイン手法の技術分析と、②国内における新たな空間タイプの導入に向けた実証実験の2項目に取り組んだ。 ケーススタディ候補地(ロンドン、ウィーン、バルセロナ、ブエノスアイレス、メキシコ・シティ、サンフランシスコ)をはじめ、シェアドスペース、スーパーブロック、パークレット等、新たな空間タイプを導入した欧州・米州における道路空間再編・利用事例に関する情報収集を実施した。欧州7カ国(デンマーク、ノルウェー、オランダ、イギリス、ベルギー、フランス、スペイン)における現地調査を実施し、資料収集と関係者ヒアリングにより、各取組事例における公共空間再生の地域戦略と個々の道路空間再編・利用事業の内容を明らかにするとともに、ビデオ撮影とスピードガンによる交通調査を実施した。各事例において採用された、①エリア・②空間・③プログラム・④プロセスのデザインに係る技術的事項を整理するとともに、各技術の適用が望ましい状況や採用に必要な措置・条件、期待される効果等を整理した。 また、研究代表者・分担者が自治体や地元協議会のアドバイザー等の形で関与する道路空間再編・利用の事業対象地6箇所(三軒茶屋駅周辺、渋谷公園通り周辺、京都三条通、大阪船場地区、御堂筋・なんば駅周辺地区)において、各対象地で検討中の新たな空間タイプを導入する実証実験の企画・実施を行なった。空間タイプの特性と実験対象地の特徴に合わせて、一時的な交通規制、仮設物や路面装飾による空間再編、民間主体による多目的利用等からなる実証実験を実施した。目視による歩行者の行動観察、ビデオ撮影とスピードガンによる交通調査、及び来街者に対するアンケート調査を実施し、効果計測と課題抽出を行なった。過年度の実験結果も含めた事例間の比較分析を通じて、各空間タイプの導入に伴う技術的な留意事項を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、海外における道路空間再編・利用事例の現地調査を実施することができたが、2021年度にCOVID-19感染拡大に伴う渡航制限の影響で現地調査を実施できなかった分の遅れを取り戻しきれず、米州における現地調査は2023年度へ先送りする形となった。 また、国内6ヶ所における実証実験の実施について、一部の対象地においては実験に伴う感染リスク等を理由に、実験内容の縮小・変更や実施を見送る形となった。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、COVID-19感染拡大に伴う研究成果への影響に対するフォローアップとして、①欧州・米州6都市の道路空間再編・利用におけるデザイン手法の技術分析と、②国内における新たな空間タイプの導入に向けた実証実験を行うとともに、新たに③国内での汎用性・実用性の検証を踏まえた体系的な計画・実装技術の構築に着手する予定である。 米州都市を中心に海外ケーススタディの関係者(行政担当者、コンサルタント、デザイナー、地域代表・民間事業者)に対するヒアリング等、現地調査を積極的に実施する。各事例における細かいデザイン上の工夫や具体的な合意形成・意思決定のプロセス、計画・設計条件に関する情報をヒアリングで収集するとともに、関連する制度・基準類に関する情報も収集・整理した上で、各技術の適用が望ましい状況や採用に必要な措置・条件、期待される効果を整理する。 国内ケーススタディにおける実証実験についても、コロナ禍で過年度に実施できなかった内容に関する関係各所との再調整や実験結果のフィードバック等、実証実験の継続的・発展的な実施に努める予定である。 その上で、海外ケーススタディ間での比較分析に基づき、公共空間再生の戦略パターンと空間タイプに応じた各種デザイン技術の選定フローを構築するとともに、国内外における計画・設計条件の比較、及び社会実験の結果を踏まえた各技術の国内における汎用性・実用性を検証し、道路空間再編・利用を通じた公共空間再生のトータルデザインのモデルを構築する。汎用性・実用性の検証にあたっては、有志研究グループや自治体会議、国際研究機関、現地研究機関と国内外の制度・基準類に関する意見交換を実施し、新たな空間タイプの普及に資する制度的枠組みについても検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、欧州における現地調査を実施したが、現地調査と出金処理のスケジュール上の都合により、海外調査に伴う旅費については、2023年度に会計処理を繰り越す結果となった。 2023年度は、コロナ禍で過年度に実施できなかった米州における海外調査を実施できる見通しがたったため、2022年度からの繰越分と併せて海外調査に伴う旅費や人件費・謝金、実証実験に伴う消耗品費として支出する予定である。
|