研究課題/領域番号 |
21K12549
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
湯澤 幸子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (30756135)
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研究分担者 |
吉村 純一 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (20524135)
福島 秀哉 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 客員連携研究員 (30588314)
福井 恒明 法政大学, デザイン工学部, 教授 (40323513)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大野美代子 / インテリアデザイン / 橋梁デザイン / 領域横断的デザイン / デザインの継承 |
研究実績の概要 |
1970年代以降の日本のインテリアデザインと土木デザインの特徴の整理を多角的に行った。 多摩美術大学アーカイヴセンターに収蔵されている資料を調査分析するとともに、専門雑誌JAPAN INTERIOR DESIGN等の通時的分析を基礎とし文献調査、関係者へのヒアリング調査を実施した。エムアンドエムデザインを共同で設立したキーパーソンをはじめ、現在残るインテリアデザイン作品である青森県藤代健生病院のデイ・ルームについて、関係者のヒアリングを行った。また、製品化されたプロダクト松のスツール(現在は生産中止のため工場在庫として残っていたもの)を実物資料として入手し、図面資料との比較分析を行った。 2021年度にアートテークギャラリーにて開催した「大野美代子研究展 ミリからキロまで」の研究報告書をまとめ、多摩美術大学研究紀要に寄稿した。同大学アーカイヴセンター主催シンポジウム「AACシューケース2021」に登壇し、「大野美代子研究展とデザインのアーカイヴ」について発表し、その講演内容は、研究誌「軌跡no.4」に編纂され刊行された。 土木デザイン分野における社会実装における課題を展覧会を通じて明らかにし、デザインの継承という視点の重要性を指摘し、かつ問題提起を行った。土木デザインにおけるデザインの継承問題については、首都高速道路公団および協働コンサルタントなどの関係者とディスカッションを行い、多角的な視野をもって批判的に考察し、研究精度を上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インテリアデザイン領域の実物資料は、国内に存在するものに関しては概ね検証することができた状態である。インテリアの特性上、対象物は少ないが、関係者のヒアリングを通じて、従来バラバラであった資料の断片が、ようやく結合し、デザインの生成過程が、ある程度、推定できる状況になりつつある。大野美代子のデザインへの課題意識の目覚めは早く、20代における様々な空間体験が強く影響していることが判明してきた。デザインの特徴として、第一に使う人への配慮があり、第二に場所性・周囲環境との調和への配慮があり、第三に普遍性の追求がある。これらは、現在では当たり前で、わざわざ特徴として挙げられることなど無いが、現在の常識が非常識であった時代において、いかにデザイナーとして行動し、常識化していったのかを明らかにする作業を行っている。 土木デザイン、景観デザイン分野の研究者との意見交換、研究会を定期的に行い、研究成果を多角的に見直す機会をもって進めている。
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今後の研究の推進方策 |
大野美代子研究展を開催以降、一般からの関心が高まり、新たに寄贈を受けた資料が多くあるため、それらの継続的な調査分析活動を行う予定である。また、研究分析が完了した資料を順次公開する準備を進めてきたが、ようやく、公開の運びとなる。 今後は、大野美代子のデザイン思想形成に影響を及ぼした留学先での空間体験を分析する予定である。資料分析の結果、1966年から1968年までの2年間滞在した場所が、おおよそ推定できる状況に至った。スイス・チューリッヒをはじめ、帰国後もIFIデザイン国際会議に参加するなど、継続的に渡航し、デザインビジネスの国際的視点の獲得、デザイナーという職能に関する意識を高めていった軌跡を実際に辿る計画である。 これまでの調査分析結果を含めて、研究論文をまとめ、学会へ投稿する予定である。 また、研究成果は、多摩美術大学にて公開シンポジウムを開催し、研究者全員登壇し、発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、2021年度に引き続き、コロナ禍の影響により、外出制限があり調査活動は、実質控えざるを得なかったため、出張旅費交通費は、そのまま次年度(最終年度)へ持ち越す事とした。また、文献調査が進むに従って、デザイン思想の基底には、空間体験が存在する事が明らかになってきた事や、公共空間における人への配慮設計に関して、当時デザイン先進国であった欧米での留学経験が影響していることが判明した事をふまえ、現地調査が必要である。資料の調査分析の結果、具体的な滞在場所を推定できたため、2023年度に現地調査を計画している。
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