研究課題/領域番号 |
21K12555
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研究機関 | 神戸芸術工科大学 |
研究代表者 |
曽和 英子 神戸芸術工科大学, 附置研究所, 研究員 (80537134)
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研究分担者 |
ばんば まさえ 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 研究員 (00249202)
曽和 具之 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (00341016)
安森 弘昌 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (20341018)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 織帯 / 紋様 / 民族文化 / 技術 / 経浮織 / 織機 / アジア |
研究実績の概要 |
本研究は、諸民族の腰帯や飾り帯など、細幅織帯の紋様に視点を当て、その文化的意味と構成美を解明すると同時に、製織技術と織具がその紋様作りに果たした役割を明らかにすることを通して、紋織り帯の文化を体系化することを目的とする。 2021年度は、文献資料の閲覧、日本の織り手たちの現地旅行見聞に対する聞き取り調査、ブータンの織り手へのオンラインインタビューなどの方法で研究を進めることができた。 1)織帯の世界分布についての調査:本研究は、織帯に関する文献資料に加えて、長期に渡ってアジアの織物についての個別調査を進めてきた織り手の工藤いづみに対する聞き取りを行ないながら、手織りで帯を織っている地域や技術について調べ、織り帯の世界分布について、大きく把握することができた。 2)紋様織り技術についての調査:細幅織物における経浮きによる紋様織り技術については、沖縄のグーシ織りと中国ヤオ族の腰帯織りに焦点を当てて比較研究を進めた。2020年度に沖縄を訪問したときに調べたグーシ織技法の資料を、中国ヤオ族の紋織りに関する文献と照らし合わせながら整理分析することができた。分析結果については論文「沖縄のグーシ織技法の解明およびその現代的伝承-中国ヤオ族の紋織りとの比較を通して」にまとめ、アジアデザイン文化学会に掲載した。 3)ブータンのカード織ワークショップの開催:ブータンのカード織はチベットから伝わり、現在は民族衣装に手織りの腰帯を締める。本研究ではブータン旅行コーディーネーターの久保淳子の計らいで、オンラインでブータンの織り手からカード織りの技術と腰帯の文化について教えてもらい、大学でブータンのカード織ワークショップを開催した。ワークショップのプログラムと簡易織機の製作については、論文「カード織の現代的継承の取り組み」にまとめ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)沖縄グーシ織について:予定していた博多帯の調査はできなかったものの、同じく経浮織りの技術による細幅織物を製作している沖縄のグーシ織りについてまとめることができた。2022年度に沖縄の花織りについての現地調査を予定していたので、2021年にグーシ織り技術をまとめたことは、今後の花織り技術の調査に向けて大きな一歩となったと考える。 2)中国ヤオ族の織物について:中国の西南部のヤオ族も沖縄のグーシ織りと類似した技術を継承しており、両者の関連についてはすでに検証しがたい問題があるものの、技術と織りの道具を比較したことは、それらの技術の現代的継承のあり方を考える上で、大変大きな指針を提供した。 3)ブータンのカード織について:本研究ではブータンの織物をもう一つの調査対象として考えている。経浮き織りの帯は少なくなっているものの、民族衣装に腰帯を締める習慣が現在にも残っており、その民族衣装には経浮き織が施されている。2021年度には、ブータン旅行コーディネーターを通して、ブータンの織り手から、さまざまな腰帯の種類と文化、技術について聞き取ることができた。ブータンのカード織りはチベットから伝わり、現在ラサ・ケラ(チベットから伝わった技術による模様織帯)として残っていることを知ることができた。これまでカード織りは視野に入れなかったが、今後カード織りによる紋様表現についても調べたいと考える。 4)簡易織機の製作とワークショップの開催:ブータンのカード織技術を学び、製作体験を活かし、研究メンバーたちとともに現代の人にも使いやすい簡易織機を開発した。簡易織機は沖縄のグーシ織機とブータンの地機の仕組みを参照しながら、椅子やソファに座って使えるように工夫した。ワークショップのプログラム運営の経験も、今後の現代的継承のあり方を検討するにあたり、重要な経験として活かされると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)日本の経浮織(博多織と沖縄の花織)についての調査:2021年度は博多織の調査を実施することができなかった。沖縄の花織と博多織についての調査を実施し、日本の経浮き織り技術と模様の特徴を把握することで、アジアの他の地域の経浮織りとの比較に備えたいと思う。特に、日本の経浮きの紋様織りにおける紋様糸すくいの工夫について調べ、文字で記録する。 2)中国ミャオ族の経浮き模様の帯織りについて:中国のミャオ族の経浮き織りと帯織りのための膝型の簡易織機については、数年前に調査したことがある。しかし、他にも異なる種類の簡易織機があることは写真で確認しているが、今のところ実際に調査する機会を得ることができなかった。2022年度には現地調査または現地の人との連携調査を進め、異なる種類の帯織機を体験することで、簡易織機のさまざまな仕組みを理解し、現代への継承の可能性を探索したいと考える。 3)ブータンの経浮織についての調査:2021年度にはブータンのカード織について学び、オンラインでブータンのカード織物の織り手への聞き取り調査を実施することができた。このような縁を活かして、2022年度にはブータンの民族衣装に用いられている経浮きの紋様織りについても調べられるよう、ネットを広げて行きたいと考える。 4)帯織りの教材の製作:上記した地域における経浮き織りの技術と織機の仕組みを調査分析し、現代の生活に適した織機を提案すると同時に、経浮き織りの技術や模様についての教材を製作する。これらの教材や道具については、研究メンバーによる実体験を重ねると同時に、対外的なワークショップを実施して、教材に対する理解度、織りの道具の使い心地を検証しながら、改良していく予定である。
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