本研究では,まず,我が国における各自治体の単位居住空間の基準と現在の単位居住空間の実態を把握した.その結果,個室居住空間の自治体基準や事例,災害用備品に関して,国際基準と比較して,面積基準は満たされている場合が多く,高さ基準は満たされていない場合が多いことが確認された. 次に,避難所の段ボールブースにおける生活空間に着目し,その形状の実態調査から得られた4要因(高さ,面積,出入口,屋根)に関して,実大モデルを作成し,その形状が在室者に及ぼす影響を定量的に把握した.その結果,個室居住空間の自治体基準や事例,災害用備品に関して,国際基準と比較して,面積基準は満たされている場合が多く,高さ基準は満たされていない場合が多いこと,高さや面積は大きいほど快適さ,広さ感,プライバシー確保の評価が高い傾向にあるが,高さ1700mm,面積4平方m以上では評価に差が見られなかったこと,空間に半分屋根がかかっている場合,快適さとプライバシー確保感が向上した. さらに,本研究は,自治体の防災担当者から地域避難所登録制度の実態を把握し,住民の地域避難所に関する防災行動意図の構造モデルを検証した. その結果,自治体は地域避難所の設置によって避難場所の確保を見込んでいるが,避難所の状況や安全性を保証できないために,住民への周知に至っていなかったこと,地域避難所がある地域では,住民の地域交流意識や記述的規範意識が地域避難所における防災行動への行動意図を高めていた.その中で,日常性バイアスは記述的規範意識を低下させている実態を確認した.記述的規範意識は地域交流意識と日常性バイアスの板挟みになっていたこと,住民が地域を主な活動範囲としている場合や,自治会および自治会館などに親近感を抱いている場合に本論で示した意識構造がより適合した. 以上の知見を安全で安心できる避難所運営のための生活環境指標として提示した.
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