研究課題/領域番号 |
21K12561
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加藤 研 筑波大学, 芸術系, 助教 (70719608)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 3Dプリンター / デジタルファブリケーション / アルゴリズムデザイン / 継手・仕口 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である、自由形状パーティションをFFF方式の汎用小型3Dプリンターを用いてセルフビルドで制作するデザインシステムを構築するにあたり、1年目の今年度は、パーティションを構成するパネルの接合部開発に取り組んだ。小型3Dプリンターには出力サイズの制限があるため、パーティションは多数の小さなパネルが連結して構成される。そのため、接合部のデザインでは、強度を確保しつつ接合方法が容易であるパネル接合構法を目指した。今年度の成果として、以下の2つがあげられる。 ①接合部形状の発案:金物を使わずに凹凸の噛み合わせだけで接合する木造伝統構法の継手・仕口を参考にした。代表的な継手・仕口の形状の応力方向、接合方向を分析し、柱や梁の線材を接合する継手・仕口を面材接合に応用する方法を検討した。面材接合では、パーティション形状とパネル接合の動作方向によってはパネル同士が衝突して接合できないことがあるため、平面、2次曲面、3次曲面の場合に分けて接合可能な接合形状を探った。その結果、面材接合に適した4種の接合部形状を見出した。 ②プロトタイプの制作:上記①で得た接合部形状を評価するため、プロトタイプとして3次曲面の鞍形シェル型パーティション(床面積2.9㎡)を制作した。形状が異なる966のパネルを実際に組み立てることから、施工性と施工精度を確認した。また、面内応力、面外応力の接合部強度も確認した。3Dプリントに際しては、GRASHOPPERを利用してパーティションの3Dデータから接合部形状が施されたパネルの出力データを取り出すアルゴリズムの設計も試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の年次計画通り、2021年度は調査研究とプロトタイプ制作による検証の両面からのパネル接合構法の開発を行うことができた。 調査研究であるパネル接合接合部形状の発案については、日本建築学会大会で口頭発表した。 プロトタイプ制作による検証については、国際学会SIGraDIの査読付き論文として発表した他、日本建築学会大会で口頭発表した。 一方で、強度に関して構造と材料の専門家の助言を得て課題整理と解決策の検討を行う予定であったが、プロトタイプ制作に時間を要したため未達成となった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においては、接合部形状の改良を行うことと並行して、デザインシステムの設計を行う予定である。3Dモデリングのアプリが普及したため、誰もが3Dデータを作成できる環境は整っているが、パーティションの3Dデータを分割、加工してパネルの接合部形状付き出力データを取り出すことには高度なスキルが必要である。デザインシステムには、こうした高度な操作をアルゴリズムを用いて自動化する方法を取り入れたい。また、誰もが容易にデザインシステムを扱えるユーザーインターフェースの検討にも着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予算では、今年度に3台の3Dプリンターの購入を予定していたが、既存の3Dプリンターが使用できることになり、購入台数を2台に削減したため。 また、強度に関して構造と材料の専門家の助言を得ることを予定していたが、プロトタイプ制作に時間を要したことから次年度の実施に変更したため。
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